第十五話 第二十六部 力のこもったストレート
栗山「ふぅ…よっしゃ!」
五回の表、この回の先頭バッターは栗山先輩だった。栗山先輩はバッターボックスに入るとすぐに内野の守備位置を確認していった。そしてバットを長く持つ。
緒方「(狙っていやがるな。なら…このコースに投げればこのバッターの力では絶対に打たれない!)」
永瀬「(ああ、もちろんだ。)」
相手ピッチャーが大きく振りかぶって足を上げる。その躍動感あるフォームは自分自身を大きくみせるかのように投げている。
シュゴオオオオ ブン! バシーーン!
ストライクワン!
栗山「(さっきより球が速い!)」
栗山の目付きが一瞬で変わった。相当なストレートなのだろう。だけどそれより集中して球筋を見ているのが由紀と海鳳だった。由紀は対戦したくて楽しみな気持ちであふれている。対して海鳳はすべてファーボールで打たせてもらえていない気持ちが怒りへと変わっていった。
シュゴオオオ ギィイン!
横倉「よっしゃ。」
打球はボテボテのサードゴロ。サードがしっかりと握って投げる。
シュッ
久保「やべっ!」
送球が高くなった。ファーストがジャンプしてボールを捕ろうとする。
バシン! ドッ
アウト!!
栗山「ちっ、上手いな。」
ファーストがギリギリのジャンプで捕球してベースを踏んだ。なんて上手いやり方なんだろうか。
横倉「すまねえ!」
久保「いいよいいよ! ワンアウト!」
岸蔵「ナイスピッチ!」
守備の乱れもしっかりとカバーする守備は本当に素晴らしかった。そして…次のバッターは…。
ウグイス嬢「一番、レフト、羽葉由紀。」
「キャーーーー! 羽葉ー!!」
すごい声援だ。そして由紀もそれに答えるかのようにバットをピッチャーに向けて集中し始めた。
緒方「(どうする? 敬遠するか? 勝負するか?)」
永瀬「(今なら抑えられる気がする。ここは勝負だ!)」
キャッチャーが敬遠するかと思っていたけど座っている。ここは勝負を選んできた。由紀もすごい集中力でピッチャーを見る。
由紀「(思いっきり振らないとヒットにならない…どこまで飛ばせるか分からないけどやるしかない。)」
永瀬「(三回も打たれて…たまるか!!)」
シュゴオオオオオ
ここに来て一番良いストレートが右打席に入った由紀の内角低めへと入っていく。すごいストレートだ。
由紀「ふん!!」
ギィイイイン!!




