第十四話 第二十一部 第一試合が…
由紀「亜弓。」
亜弓「あ、由紀。始まったね…。」
私は暑くまぶしい日差しを手でかざしながら空を見上げた。この暑い中、何試合も何試合もやっていくのか。そして…勝利と敗北の汗が積み重なってできたこの甲子園…。私たちの夏が始まったのか。
ゥゥウウウウウウウウーーーー
サイレンが鳴り響いた。いよいよ第一日の第一試合、対 の試合が始まるのか。
キィイイン!!
新天「あ、初球打った。」
サイレンが鳴りやまないうちに金属音が聞こえてきた。本当に始まったのだなと実感できた瞬間だった。
海鳳「どうだった池之宮。ここでホームラン打てそうか?」
池之宮「当たり前だ。ここでホームラン打たなきゃプロへの道は始まらないでしょ。」
二人の意識は高い。でも何よりも意識を高く持っているのは三年生、とくに府中先輩だろう。
府中「どうだ芦毛、甲子園の雰囲気は。」
芦毛「これをまっていたんだぜ。思いっきり投げられそうだ。」
卜部「俺たちの最後の甲子園だ。思いっきり暴れよう。」
先輩たちの意気込みは人並みではないものを感じられた。私たち一年生の投球で先輩たちの甲子園を終わらせるわけにはいけない。
館川「俺たち、かなり重要だな。」
亜弓「うん…でも私たちならできそうな気がする。」
私たち一年の背番号をもらった人たちは戦う準備を整えていた。それ以外の人たちも精一杯応援するための準備をしていた。
萌「あなたたちだけじゃないのよ。」
私は聞き覚えのある声にふりかえった。そこには萌と美和先輩がいた。もう甲子園の舞台に来ているのだろうか。
由紀「萌!」
萌「げっ、由紀。」
亜弓「来てくれたんだね。」
美和「やほー。」
三由「やってきたのね。」
美琴「お疲れ様ー。」
千恵美「暑い中ご苦労様ね。」
恵美「千恵美、日傘さしながらそれいうのは失礼だと思わない?」
瞳「萌来てたのね。」
萌「ま、まあね。」
真希「ところで今ここに来てるのは吹奏学部だけ?」
美和「ここに来たのは吹奏楽部よ。チアリーディング部も来ているけど、今は練習中だからここにはいないわよ。」
ということは優衣や香澄、久美に綾先輩もいるのか。こんな人たちがたくさん来てくれるのはうれしいなあ。
萌「絶対負けるんじゃないわよ。」
亜弓「うん……まかせて。」
萌「……由紀。」
由紀「なに?」
萌「バッティング期待しているからね。」
由紀「萌…わかっているよ! 全部ヒットにするんだから!」
由紀と萌は強い表情のままお話していた。もう喧嘩はしなくなったのかな…それともまだ…。
由紀「ん。グータッチして。」
萌「わかったよ…。」
そういってグータッチすると二人とも笑って萌が去って行った。やっぱり仲は良くなったのかな。




