第十四話 第四部 すでに勝負は始まっている。
亜弓「か、勝浦さん!?」
武蔵「日高亜弓だっけ? テレビで見たぞ、すごい投球しているんだってな。」
亜弓「いやいやいや、私なんてそんな…。」
上野「そして羽葉由紀。すごいセンスだな。」
由紀「ありがとうございます!」
由紀は平然と返している。私の足はプルプルと震えているのに由紀は全く動じる様子がない。うらやましすぎるよ。
六実「本当にあなたたちと会えてよかったわよ。女性選手が増えるというのは嬉しいことだからね。そして何よりも…戦ってみたいし負けたくないわね。」
その言葉を聴いて私はゾクッと来た。相手のプレッシャーや意気込み、ここまで背負ってきたきたものが見えていた。あまりにも格が違う。特に勝浦さんは信じられないほどのオーラが見えている。本当に私はこの人たちといざ試合で当たった時、勝てるのだろうか。
由紀「そういっていただけるのはありがたいですね。真剣に挑んでくれて…。私だって負ける気なんて満更ありません。」
由紀の気持ちも相当なものだった。私は何も言えない。口に出したいのに口が開かない。勇気がないからだ。アレだけ試合中は自信を持ってやってきたのに、ここまで敵がすごすぎると何もいえない。
由紀「亜弓、この人たちなんて全員三振に出来るよね!!」
亜弓「ええっ!? いや、その…。」
相手の目線が私に集まる、怖い、でも…逃げちゃいけない…。何とかしてでも…。
亜弓「わ、私は……負けません!」
淳和「そうこなくっちゃね。勝負はここから始まっているのだから、その意気込みは良いことよ。」
武蔵「俺たちも最後の甲子園だ。全力を尽くす。」
上野「最高の試合をしよう。」
六実「由紀…。君にはヒット一本も打たせないからね。」
そういい残して四人は席に戻っていった。
由紀「!」
亜弓「どうしたの由紀?」
由紀が軽くのどを鳴らしたように声を出した。いったい何だろうか。
由紀「何にもないよ。戻ろうか。」
亜弓「わかった。」
由紀「(遠江六実さん…。もしかしてあの左手…。間違いないはず。それであの投球が…?)」




