第十二話 第六十二部 府中先輩の告白
「優勝、松江学園」
県庁が府中先輩に賞状を渡す。会場は大きな拍手と共に声が聞こえてくる。本当に勝ったのか…私たち。
芦毛「本当にすごいな。俺たちってこんなにすごかったんだな。」
卜部「なんだそりゃ。甲子園に行けたんだからもっと胸張っていこうぜ、エース。」
私は暑い日差しを浴びながら表彰式の様子を眺めていた。隣にいる由紀は笑顔で立っている。これが優勝したという実感なのだろうか。
海鳳「まあ俺たちがいれば甲子園でも優勝できそうだな。」
池之宮「お前の力じゃない、俺の力だ。」
新天「みんなの力だよ。個人種目じゃないんだから…。」
前では三人が何か話している。誰の手柄でもない、皆の手柄だよ。
………。
由紀「終わったー。」
由紀は背伸びをした後に飲み物を飲んでいた。そして周りを見渡した後、不思議そうな顔をした。
由紀「あれ? 三由先輩と府中先輩がいない。」
亜弓「えっ。」
私も見渡してみたが、たしかにいない。どこに行ってしまったのだろうか。
真希「もしかして恋のヨカーン!!」
瞳「ちょっと、変なこと言わないでよ。」
恵美・千恵美・美琴「よし、見に行こう。」
亜弓「い、息ぴったり…。」
そういって私たちは外側からどこにいるかを探し始めた。しかし探す必要はなかった。すぐ近くに二人だけでお話している。後ろから私たちは覗いている。
三由「な、何?」
府中「試合、どうだった?」
三由「すごかったよ。本当にかっこよかった。」
府中「そうか………薪苗、単刀直入にいう。」
三由「はい…。」
府中「お前が好きだ。」
三由「……えっ!?」
うわぁあ! こ、告白だ告白だ。まさかこんなことを目の前で見るなんて…。み、三由先輩の返事はいったいなんだろうか…。
三由「あの…私付き合ったこともないし…恋愛なんて。」
次の瞬間、府中先輩が三由先輩を抱きしめた。
由紀「ふぇ…ふぇええええっ!?」
千恵美「こら、うるさいわよ。」
恵美「それより見せなさいよ。」
抱きしめ続けている。そして三由先輩の目から涙が流れてくる。
三由「私……私っ。…ありがとう…私も好きだよ。」
そういって三由先輩は府中先輩に抱きしめ返した。うわぁ…こんなところでカップル成立しちゃった所見ちゃったよ…。わー、わー! ってあれ?美琴先輩がいない…ってなんであんなところに!?
美琴「おめでとう。お幸せにね。」
三由「わ、うわぁっ!!! みっ、美琴!?」
府中「あ、そのー…。まあ。」
三由「……。」
三由先輩が照れながら顔を隠している。そして何を言うのかと思ったら…。
三由「ほ、ホモォ…!」
府中「さて、戻るか。」
三由「ちょっとまって! おいてかないで!!!」
いつもの三由先輩だった。でもそんないつもの三由先輩が好きだったのだろう。お二人とも、幸せにね。
瞳「あ、由紀が倒れている。」
由紀「告白……うへ……うわぁ………。」
恋愛耐性が0な由紀はこの状況はかなり厳しいものがあったのだろう。由紀…ドンマイ…。
真希「由紀ちゃん! しっかりして!!」
カクン
亜弓「わー!! それ追い打ち!!!」
……真希もゲスかった。




