第十二話 第五十七部 ドクターKの異名
山下「よっしゃ来い!」
ノーアウト満塁、一番バッターの山下がバッターボックスに入った。由紀はすぐにサインを出してミットを出した。ストレートをど真ん中、思いっきり。足を上げて腕をしならせて…。
シュバアアアアア バシューーン!! ストライクワン!!
山下「(なんだこの速さは!?)」
よし、ど真ん中にストレートが決まった。これなら抑えることはできそうだ。いや、絶対に抑えられる!
近沢「くそっ、なんだあの投げ方は。出所がわからないというのはこういうことだったのかよ。」
富坂「いや、俺が打ってお前につなげる。一発は任せた。俺は確実に一つを狙いにいく。」
シュバァアアアア ブンバシューーーン!
ストライクツー!!
府中「おけ!! 振り遅れてるよ!!」
瞳「亜弓すごいすごい!!」
真希「抑えられるよ! 亜弓の投球が通用してるよ!!」
私の球で振り遅れている。この強豪相手にも十分戦えている。私は…自分のやり遂げること…勝つことを!!
シュゴオオオオ ブンズバーーーン!!
ストライクスリーバッターアウト!
亜弓「っしゃあ!」
由紀「ナイスピッチ!! ワンアウト!」
木下「…くそっ!!」
私はガッツポーズをした。三振をとってワンアウトになった。私の投球は十分通用している。すごくうれしいし、もっと投げたい。次のバッターも三振に仕留めたい!
山下「……すまなかった。」
梅岡「それだけ強敵だということだ…。気合入れて俺がやってやる! おらぁあああ!!」
次は二番の梅岡がバッターボックスに入る。由紀はすぐにサインを出している。
由紀「(ここだよ。ここに投げれば抑えられるよ。)」
私はうなづいてミットめがけて投げ込む。
シュゴオオオオオ ブンズバーーン!
ストライクワン!
梅岡「(想像より速い、こいつはマジでやばいかもしれねえ。)」
私の一球一球で会場が声援でいっぱいになる。相手も必至の応援をしている。相手も押せ押せムード、私たちもイケイケムード。ぶつかり合っている中、私は投げている!
シュゴオオオオ バシーーーン!!
ストライクツー!!!
由紀「(これが入ったのはデカい。それにしても本当にすごい。奪三振をたくさんとっている。球の速さ、キレ、ノビ、変化球がすごければ奪三振を稼げるというけど、亜弓はノビの良さとこの見えにくい投げ方が大きな武器になっている。まさにドクターKみたい…。)」
梅岡「これが入るのかよ…。」
阿湖音「(亜弓すごい、あれが神によって与えられた力…でも今は味方の応援しないと…。)」
ストレートの勢いとコントロールがかなり良く投げられている。由紀がキャッチャーだからだろうか、今までの中で一番良い球を投げられている気がする。やっぱり由紀はすごい…。私の力を最大限に発揮させる術を知っている!!
シュゴオオオオ ブン!バシューン!!
ストライクバッターアウト!!
亜弓「ったぁ!」
由紀「ツーアウト! ツーアウトだよ!」
梅岡「……くそっくそっ!!」
由紀が指で指示を出してアウトカウントを教える。いよいよツーアウト。あと一人で…試合が終わる!!
梅岡「キャプテン…。」
富坂「浮かない顔するな。まだ終わったわけじゃない。俺が…打ってくる。」
近沢「キャプテン! 打てなかったら招致しないぞ!」
やってきた、一番気を付けなければいけないバッター、キャプテンの富坂。
ウグイス嬢「三番、ファースト、富坂くん。」
富坂「ふぅ………よし!!」




