第十二話 第五十一部 こっちのクリーンナップ
海鳳「よっしゃ! こっちもクリーンナップからだ! こっちは点取っていこうぜ!」
池之宮「じゃあまず海鳳が塁に出ることだな。」
新天「二人とも落ち着いていこうね。俺も落ち着いていくから。」
三人はバットを持って素振りをしていた。あの投手は尻上がりに調子をあげてきているのだろうか…。
バシーーン!
ミットの音がきれいに聞こえてくる。球の勢いが良くなってきている証拠なのだろうか。館川も相手ピッチャーの様子を見て何か感じたかのような表情をみせてきた。
館川「海鳳、落ち着いて行けよ。単打だけで良い気がする。」
府中「たしかに雰囲気が違うよな。疲れはあるだろうが意地はある。そこを狙うべきかどうかは…海鳳の打ち方次第だ。」
海鳳はうなづいてバットの感触を確かめながらバッターボックスへと入っていった。そして左打席に入るとバットを寝かせて構えていた。相当力を抜いてバッターボックスに入っているのだろうか。
早田「(そう簡単に打たせてたまるかよ。もう八回なんだ。俺たちに残された少ないチャンスを無駄にしないようにここは三人で抑えるぞ。)」
萩「(おう。)」
相手ピッチャーはゆっくりと足を上げて投げた。
グググッ
海鳳「(パームボール。ためてためて…。)」
ギィイイン!
萩「うわっと!」
バシン! アウト!!
海鳳「おう、まじか!」
打球はピッチャー強襲だったがファインプレーで捕られてしまった。これでワンアウト、次は池之宮の打順になった。
池之宮「ふぅ…狙うなら…。」
池之宮は何かぶつぶつといいながらバッターボックスへと入っていった。相手バッテリーは警戒心を強めた。
早田「(こいつだけは別だ。クサイところ狙っていくぞ。)」
シュゴオオオ バシン! ボールワン!
ググググッ バシン
ボールツー!!
館川「見えてる見えてる!」
由紀「でもあの球不思議…。厳しいところばかり投げていて…。もしかして勝負を避けるつもりじゃないかな…。」
シューーー
ギィイイイイン!
萩「うわっ!」
ガサッ ファールボール!
あああああああ。
会場から大きなため息が聞こえてくる。打球は完璧なほどホームランな打球。しかしファールゾーンへと飛んでいった。
卜部「惜しいよ惜しい!」
シューーーギィン!
池之宮「やべっ。」
また大きなため息が聞こえてきた。今度は完全なるボテボテサードゴロ。これはもう何も言えないほどひどかった…。
バシン アウトー!
新天「やっちゃった。」
新天は二人の打撃状況を見て少しがっかりとした様子でバッターボックスへと向かった。そりゃ前の二人が期待されておきながら凡退したのは精神的にキツいものになる。
由紀「亜弓、点、取れそうもないね。」
亜弓「そうだね…。」
日下部「海鳳! ブルペンで投げておけ! 次だぞ!」
海鳳「うっす!」




