第十二話 第四十二部 矢のような送球
青野「よっしゃ!」
八番の青野がバッターボックスに入る。芦毛先輩は疲れた様子を見せているものの、根性で粘っている。あとはこの回を終えることができれば館川へとつなげられる。しかし相手も粘ってくる。どう抑えていくのだろうか。
シュルルル ギィン!
ファールボール!
スクリューを投げたがカットされた。そろそろ当てられるようになってきたのだろうか。粘ってください!
シューーー ギィン!
卜部「オーライ!」
卜部先輩のいるセカンドへと軽いフライになった。ランナーはこれでは進めなさそうだ。
インフィールドフライ!
パシン
インフィールドフライも宣告された。これでアウトは確実になった。卜部先輩がしっかりと捕球してツーアウト一二塁。これで抑えやすくなった。そして次は九番の古木。ここは確実に抑えて次へとつなげたい。
古木「(ツーアウトか。こんなチャンスなんてめったにないだろう。おそらく次は投手を交代してくるだろう。俺がここで叩かないともうチャンスはねえ!)」
シューーー ブン! バシン!
ストライクワン!
府中「良い球だ!」
勢いのあるストレートが内角に決まった。気合があればここまで良い球が投げられる。高校野球は本当に怖いところだ。
シュゴオオオ バシーン!
ボールワン!
芦毛「(まだだ。まだ投げられる!)」
芦毛先輩はセカンドランナーとファーストランナーを確認した後セットポジションから足をあげた。
シュッ
古木「(なんでもいい! 振れ!)」
ギィイイイン!
卜部「なっ!」
打球は一二塁間を抜けてライト前へと飛んでいった。ヒットになってしまった! このままでは一点取られてしまう。
府中「沖田!」
海鳳「バックホームだ! お前の肩なら刺せる!」
沖田「っらあああ!!」
「早田止まれ!」
早田「えっ!?」
ライトから矢のような送球がホームへと飛んでいった。
バシーーン!
うおおおおお!!
威嚇だけでも十分な迫力だった。セカンドランナーはホームに突っ込むのをやめてサードベースで止まった。まだ点はとられていない。しかし次のバッターは一番の山下。ツーアウト満塁、ワンヒットで一点差か同点になってしまう。この状況をどうやって逃げ切るのだろうか。




