第十二話 第四十一部 執念の
真菜「かなり疲れているみたいね。」
佐奈「投手の準備必要かな…?」
日下部「館川、しっかり肩作っておけ。芦毛が疲れてきてたらいくぞ。」
館川「はい!」
日下部「友亀、お前もキャッチングの感触をしっかり整えておけ。この回とは言えないが、途中で交代を頼むかもしれないからな。」
友亀「わかりました!」
友亀と館川がベンチから出てもう一度肩を作り始めた。館川先輩は疲れているのだろうか。私にはそうにはみえない。相手の負けられない気持ちが押してきているように見える。でももし本当に疲れているようだったら…。まずいかもしれない。
シューーー バシン! ボールワン!
府中「落ち着いて! 大丈夫だ!」
芦毛「(くそ…あちぃ。腕が思い通りに振れねえ!)」
シューーー バシン! ボールツー!
シューーートッ バスン ボールスリー!
青野「よし! 見えてる見えてる!」
梅岡「ピッチャー自滅するぞ!」
シュゴオオオ バシン! ストライクワン!
府中「(勢いは落ちてないけどコントロールがな…。このまま引っ張っていくのは厳しいかもしれねえ。)」
芦毛「(ここで抑えなければ…せっかくもらった点が台無しになるのは!)」
シュゴオオオ バシン! ボールファア!
萩「しゃあ!!」
富坂「おけ! これで一二塁!」
ファーボールになってしまった。かなり難しいところに直面してしまった。コントロールは今から直せるようなそんなものじゃない。後続はどうやって抑えていくのだろうか。
木村「しゃあ!」
青野「木村!! 続け!」
府中「芦毛、ここは打たせてとろう。このまま相手の勢いに乗せてしまったらダメだ。」
芦毛「だからこそ三振をとるんじゃないのか? 打たせてとるならまた良い当たりが飛んでいくだけだ。」
府中「俺を信じろ。」
府中先輩は何か芦毛先輩に強く言ってから戻っていった。なにを言ったのだろうか。芦毛先輩がセットポジションでランナーを見る。そして足を上げる。
シュゴオオオ
木村「(たたけ!)」
ギィイン!
府中「サード!」
当たりはサードへの小フライ。これでは相手ランナーも進めることは出来ない。ゆっくりと新天が構える。
パシン アウトー!
古木「あー! 惜しいよ! 当たってる当たってる!」
山下「青野! 次はお前が決めろ!!」
青野「まかせておけ!」
アウトにはなったけれども相手のムードは落ちていない。むしろどんどんあがっていく。これが甲子園を目指す人たちの執念なのか。けれどもその気持ちなら私たちだって負けてない。
新天「しゃあ! もういっちょこい!」
海鳳「センターこいやー!」
卜部「ばっちこい!!」
応援に負けないほど私たちも声を出している。この場の野球している人たちみんなが楽しんでいる。なんて楽しい試合なんだろう!




