第十二話 第二十五部 執念のこめられた
府中「仕方ない。こっから抑えていくぞ!」
芦毛「府中、絶対に俺はこれ以上点をとられないようにする。だから…俺はもう首を振らない。」
府中「…ああ。任せろ。」
府中先輩は気合を入れてキャッチャーボックスに入った。芦毛先輩も府中先輩の顔を見ている。いったい何を考えているのだろうか。
青野「(どうなっているかしらねえが、波にのって点を取ってやる!)」
プレイがかかって五回表の守備が始まった。芦毛先輩は足を上げて腕を振った。
シュゴオオオオオ
青野「!?」
バシーーーン! ストライクワン!
府中「(なんだこいつは、いままで感じたこと無い感触だ。)」
海鳳「(覚醒したな。)」
な、なんだ? いきなりストレートの勢いが増した。速さではない、球威でもない。何かさっきとはまったく違うボールになっていた。執念がこめられた…そんな全力投球だ。
シュゴオオオ ブン バシーーン! ストライクツー!
青野「(くそ、何が起こっているんだ。何がなんだかわからねえ!)」
シュゴオオオオオ ブン ズバーーーン! ストライクバッターアウト!
芦毛「っらああ!」
府中「おけ! ワンアウト!!!」
あっというまにワンアウト。芦毛先輩がほえた。そして周りの守備陣がそれに答えるように声を出している。これがもし敵だったら…恐ろしいことになっているだろう。
由紀「(いいねえ。ものすごくビリビリくる。)」
シュゴオオオ ブン バシーーン!
ストライクワン!
古木「(確かにこいつはすげえ。でもストレートばかりなら打てるはず!)」
シュゴオオオ ギィン ガシャン ファールボール!!
府中「(ファールになった。)」
古木「(なんだこの重さは!?)」
富坂「バット当たってるぞ! いけるいける!!」
芦毛先輩は相手打者のことはまったく考えず、ただ府中先輩の出すリードにしたがって投げている。そしてこの気合、怖いものなんて何も無い!
シューーー
古木「(もらった!)」
グググッ ブン バシーン!
ストライクバッターアウト!!
古木「す、スクリュー…。」
府中「ナイスピッチャー!!(これまでにない最高のスクリューだ。)」
芦毛先輩の投球が開花したのだろうか、まさにバッタバッタと打者を切り落としていく。そしてあのスクリュー、簡単に打てる球じゃない!
由紀「(あのスクリュー、打ってみたいな。)」




