第十二話 第二十四部 球筋を良く見て
近沢「(さすが府中キャプテンだな。しかしそう簡単に点なんかとらせてたまるか。)」
ノーアウト一塁でバッターは海鳳。しかし構えはバントだ。海鳳にバントをさせて池之宮で返す作戦だろうか。
早田「(やらせてもいい。確実に一つずつアウトを取っていこう。)」
守備はそれほど前進していない。海鳳のバッティングならヒッティングもできるだろう。だからこその警戒なのだろうか。
シュッ コツン
海鳳「っしゃ!」
海鳳のバントは綺麗に三塁線上に転がっていった。サードは走ってボールをつかむとためらいもせずにファーストに投げた。
バシン アウト!!
卜部「ナイスバント!」
栗山「決めるところはしっかりきめた! あとは池之宮に託す!」
池之宮はバットをクルクルと回してバッターボックスに入った。池之宮のアナウンスがされると応援席からものすごい声援が聞こえてきた。ここで点差を縮められたら後々が楽になる。打って、池之宮!
池之宮「(サインは…待てか。)」
萩「(ストレートは投げない、変化球だけだ。)」
富坂「落ち着いていけよ! 萩なら大丈夫だ。」
ピッチャーがセットポジションに入って足を上げる。
シュッ グググググッ バシン
ボールワン!
早田「(振る様子もねえだと。馬鹿に慎重なのか?)」
ピッチャーとキャッチャーは池之宮の様子に気づいたみたいでセットポジションに入り、すぐに投げた。
シュッ グッ バシン
ストライクワン!
萩「(打てないから見ているだけなんだろ?)」
池之宮「(……。)」
グググッ バシン! ストライクツー!
変化球が三球続けて投げられた。パームボールにスライダー、カーブをなげられては打てる球なんてこの三つのどれかに絞られてしまう。でも池之宮は変化球を打つのが苦手だ。どうして振らなかったのだろうか。
中山「一か八かのようだな。」
由紀「池之宮なら打ちますよ。」
なんだろう、ベンチの何人かは安心した顔を見せている。なんでだろう。そしてまたセットポジションに入った。
シュッ ダダッ
早田「(盗塁だと!?)」
富坂「まじかよ!!」
池之宮はステップを取って振りにいこうとしている。まさかヒットエンドラン!
日下部「(あいつの野球センスならボールの球筋をしっかりと見て覚えていれば打てる。いけ!)」
ギィイイイイイイイン!!! バシーーーン!
富坂「わああっと!?」
府中「ヤバッ。」
打球はファーストへのものすごいライナー。グローブが飛びそうになったがしっかりと握った。そしてセカンドベースカバーに入ったショートに向かって投げた。
バシン アウトー!!
池之宮「っくそっ!!」
またもや運に突き放されてしまった。運の悪いプレーでダブルプレーになってしまい、スリーアウトチェンジになった。




