第十二話 第二十三話 体調と集中
芦毛「すまねえ、打たれちまって。」
府中「心配するな、俺たちが逆転してみせるからよ。」
そういって府中先輩はすぐにバッティングのために道具の取り外しと準備をしていた。芦毛先輩は監督とお話している。監督はまったく怒った様子は見せずに芦毛先輩の胸をたたいた。そして芦毛先輩のこわばった顔がゆるんできた。落ち着いた芦毛先輩はそのままベンチに座った。
三由「芦毛、たくさん水分捕球して。」
芦毛「え? なんで。」
三由「見る限り脱水症状に近いことになっている。一気に飲まずにゆっくりと飲みなさい。三杯ぐらいが良いかも。あと服を着替えるといいよ。」
芦毛「そうか。ならちょっといってくる。」
そういって芦毛先輩はベンチ裏で着替えに移動した。三由先輩の洞察力はすごい。さすが三年間選手を見てきただけある。
府中「さて、点を取り返すには俺たちが打たなきゃいけないのか。」
府中先輩がゆっくりとバットを振ってバッターボックスに入った。何か考えながらバッターボックスに入っているように見えた。けれどもその考えはすぐに決心がついたようで、すぐに自信のある顔が見えてきた。
早田「(やりずらいな。変化球で交わしていくか。)」
ピッチャーが足を上げて投げる。
ググッ バシーン! ボールワン
萩「(ピクリともうごかねぇ)」
府中先輩はまったく動じなかった。それもすぐにボールだとわかるようにすぐに打つ気配を消していた。もしかすると何か狙っているのかもしれない。何だろう?ストレートだろうか。
シュッ シュゴオオオオ バシーン!
ボールツー!
早田「(くさいところはまったく手をださねぇ。なんだこいつは。)」
ピッチャーとキャッチャーが迷っている。たぶんそこにつけこんでいくのだろう。そしてまた投げる。
シュッ
またボール球。これも見逃すだろう。
早田「(スライダーだよ!)」
グン ギィン!!
早田「(なっ、サード、飛びついて!!)」
打球はゴロで三遊間を転がっていく。勢いが良く、このままだったら抜けるだろう。ファインプレーさえなければ。
古木「ちっ!」
ズザザザ
伊沢「抜けた!!」
新天「まだショートがいる。」
山下「こんのお!」
シュッ!
ショートが深い位置からファーストに投げる。しかし府中先輩の足は速い。これなら確実に…!
バシン! セーフ!
池之宮「渋いな、ナイスバッティング!」
海鳳「よっしゃ! 俺に任せろ!!」
内野安打。これは精神的に大きなダメージがある。そして続くは海鳳。このチャンスを物にしていけば逆転への道は簡単だ。




