第十二話 第十六部 テンポ良い投球
ストレートの勢いはまったく変わらず勢いが良い。府中先輩のリードもさえてポンポンとリズム良く投げている。
府中「(よし、このままいけばしっかりと抑えられる。)」
シューーー ギィン!
府中「(ファースト!)」
ファーストへのフワっとしたフライ。池之宮はしっかりと構えて捕球体制になった。
バシン アウト!
池之宮「ワンアウトー!」
木村「ちっ、アイツいい球投げてやがる。」
近沢「でも付け入る隙は必ずある。そこを狙って打っていけば攻略はできるはずだ。あとは…俺たちの練習してきたものを最大限に生かして、信じるだけだ。」
シュゴオオオオオ バシーン!
ストライクワン!
青野「くそっ、速い。」
芦毛先輩のテンポがどんどんよくなっていく。このままいけば相手の攻撃は無力化していくに違いない。そのままがんばってください、芦毛先輩!
ブン! バシーーン!! ストライクバッターアウト!
芦毛「しゃあ!」
卜部「ナイスピッチング! いいねえ!」
府中「ツーアウト!!」
特に三年生の先輩にとってみればいつ最後の試合になるかわからないところを戦ってきている。すべてが負けられない試合、それにかける思いは果てしなく強いものがある。
シュルルルル ブン! バシン! ストライクツー!
古木「ちっ。」
打てないことによって負の連鎖が始まる。気持ちの問題というのだろうか、勢いというものが完全に変わってくる。それを変えられる人がいれば…流れは一気に変わるかもしれない。
ブシィ! バシーン!! ストライクバッターアウト!!
芦毛「よっしゃあ!」
海鳳「いいっすね!」
簡単にスリーアウトを取ってチェンジになった。このままの勢いでこの回にも追加点が欲しい。
芦毛「次は俺からか。」
府中「しっかり水分捕球は怠らないようにしておけよ。」
芦毛先輩は水分捕球をしてバッティンググローブをつけて防具もつけ、バットを持ってベンチから出た。あれ? 何か忘れている気が…。
亜弓「芦毛先輩! ヘルメット忘れてます!」
芦毛「あれ? マジか。」
府中「何か考えていたのか? ピッチングのことを考えるのもいいが今はバッティングに集中してくれ。」
芦毛「スマンスマン。」
「ワハハハハ。」
ベンチから笑いが出てきた。これでみんなの気持ちもリラックスできたかもしれない。ちょっと…いい仕事できたかな?




