第十二話 第十四部 前進守備と強肩
新天「っし。」
新天が右手を握ってガッツポーズをとった。そしてまだノーアウト二塁。ここで由紀の打順が回ってきた。
「かっせーかっせー由紀!!」
スタンドからは大きな応援が聞こえてくる。ここまで由紀の打撃成績は私が風邪で休んだ時の代打凡打でミスした以外、すべてヒットを打っている。由紀には絶対的な安心感が持てる。
由紀「わお。」
由紀がニコニコしながら素振りをして左バッターボックスに入った。良く見ると守備がかなり不規則な形をしていた。外野はかなり前進守備で内野は中間地点、ランナーをまったく気にしない守備位置をとってきた。ここにきて対策するための守備をとってきた。
亜弓「由紀…大丈夫かな。」
海鳳「バッティングセンスがものすごくてもあの守備をとられてはやられてしまうだろうな。」
亜弓「そんな…!」
三由「いや、私はそうには思えないと思うよ。由紀の目には自信を持って打席にたっている。問題ないよ。」
三由先輩は安心して由紀を見ている。私たちはあまり心配しなくても大丈夫なのだろうか。
シュゴオオオオオ ズバーーン!
ボールワン!
早田「(それを見逃すか? こいつはやっぱり天才だ。)」
萩「(まともに戦ったら正直勝てる気がしない。最大限に俺の力を引き出して内野に守ってもらうしかない。)」
ピッチャーがすごい集中力で由紀を見る。由紀はそれにまったく動じず、バッターボックスで構えている。
シュッ ググググッ バシン
ボールツー!
卜部「よし、見えてる見えてる!」
かなりきわどいところに投げている。ファーボールでも良いと思っているのだろうか。
シュッ グググッ
由紀「(カーブ! これを叩いて!)」
ギイィン!!
打球はセンター方向に飛んでいく。セカンドとショートが走って飛びつこうとする。
伊沢「新天! ホームだ、抜ける!」
山下「とどけっ!」
梅岡「らあ!」
ズザザザザ
栗山「よし、抜けた!!」
打球はコロコロとセンター方面へと転がっていく。新天はサードベースを蹴ってホームに突っ込んだ。
近沢「らああああ!!」
センターがボールをとると思いっきりホームに向かって送球した。ものすごい勢いでキャッチャーのミットへとボールが飛んでいく。クロスプレーになる!
バシン!ズザザザ!
審判「アウトー!」
由紀「(セカンはいけない!)」
新天「くそっ!」
打球もちょうど良く新天のスタートも良かった。ヒットという結果にはなったが、前進守備とセンターの強肩によってホームで刺されて追加点を取ることができなかった。さらには由紀もセカンドまで進めることができなかった。




