第四話 第三部 雑誌や天才やモデルや…。
府中「よし、皆そろったな、乗るぞ。」
皆「はいっ。」
私たちは新幹線に乗った。これから名古屋に行って、到着したらそこからバスに乗り、知多に行く。結構な時間がかかりそうだ。
新幹線の中で、私たちは学校の話題で持ちきりだった。
真希「昨日話しかけてきた優衣のことだけど、あの子チアリーダーできるのかなぁ。」
亜弓「たしかアイドル時代に踊っていたからできると思うよ?」
由紀「そうだったんだ。というか亜弓、よく知っているね。」
瞳「昔からファンだったの?」
亜弓「私じゃなくて弟がね。たまに一緒にテレビで見させられたりしてたから。」
瞳「なるほど。」
真希「本当は亜弓がファンだったりして。」
亜弓「ち、ちがうって! 嫌いではないけど…。」
瞳「あ、そうそうこの前、マネージャーたちで吹奏楽部の方に挨拶しに行ったんだ。」
由紀「そっか、大会ではお世話になるもんね。」
瞳「すごく人数が多かったよ。それにね、部長さんがとても美人なの。」
亜弓「へぇー。」
三由「あぁ、蓮沼美和のことでしょ。」
美琴「みんなに信頼されて、お姉さんみたいなポジションだからね。ついでにモデルさん、うらやましい限りだよ。」
由紀「なにそれ、すごっ。」
恵美「そうそう、すごいと吹奏楽部で思い出したけど、そこにすごい一年生もいるのって知ってる?」
真希「名前は分かりませんが、たしかピアノコンクールで日本優勝した人だったような気がします。」
千恵美「そうそう、名前は橋風萌だったはず。あの子はすごいよ、吹奏楽部ではトランペットやってるらしいけど、郡を抜いて上手いらしいよ。」
亜弓「音楽なら何でもできるのか…。世の中にはもっとすごい人たちがたくさんいるね。」
伊沢「日高、羽葉、ちょっとこっちに来てくれ。見せたいものがあるんだ。」
私たちが話してるところに後ろから伊沢が声をかけてきた。海鳳も顔をだした。
海鳳「お話中にすみません。ちょっと野球のことでお話しがありまして。」
海鳳は先輩たちに謝るように言った。
恵美「私たちも見てもいいかしら?」
恵美が聞くと海鳳がびしっと姿勢を正した。あれ?……これってもしかして。
海鳳「よ、よろこんで!!!」
海鳳が大きな声で返事をした。にしても声が大きすぎるよ。
日下部「おい海鳳、うるさいぞ。静かにしろ。」
案の定監督に怒られた。周りからはクスクスと笑い声が聞こえる。ともかく私たちは立ち上がって伊沢と海鳳たちがいる席に移動した。
海鳳「この雑誌知ってるか?」
海鳳が雑誌の表紙を見せてきた。
由紀「あぁ、月刊甲子園高校野球でしょ。知ってる知ってる。たまに買っているよ。」
亜弓「私も名前なら知っています。」
海鳳「表紙は今年から新しい学校で監督として就任した人たちの写真が多いようにみえるけど意外と選手のことも今回書かれていたんだぜ。」
そういって一枚、二枚とページをめくっていった。大見出しとしては別の学校の監督に就任した、おもに有名な人たちのインタビューについて書かれていた。
伊沢「ここからだ。」
伊沢が言った次のページには高校生へのインタビューのページになっていった。
亜弓「あっ、これ。」
私は思わず指をさして言った。そこに写っていたのは…。
由紀「これ、去年の夏と今年の春優勝した富良学『富良野学院高等学校』のキャプテン、山茶花桜と、二年生エースの八幡暁美だ。」
美琴「私も知ってる。」
三由「女性なのにすごいよね、男子と普通に戦っていけるんだもん。しかもずば抜けているし。」
海鳳「俺はいつか日高と羽葉がここに載ると思っているぜ。」
亜弓「いやいや、私なんか。」
真希「可能性あるねー。」
亜弓「えっ!?」
瞳「亜弓も由紀もすごいよ。きっとこの人たちみたいになれると思うよ。」
そういわれて私はもう一度写真の二人をみた。この二人みたいになれるのだろうか…。
海鳳「ほら、他にも青森代表で出た片岸ディア(かたぎし ディア)とかもでっかく載ってるぜ。さすがだなぁ。」
伊沢「そして極めつけは…ちょいとちっちゃいけど。」
そういって伊沢はページの左側に四角で囲ってあるところを指差した。そこには…。
由紀「池之宮じゃん! すごい!」
海鳳「さすがだよな、やっぱり中学から名前が知られてるやつは違うよな。」
伊沢「すげえな、池之宮!」
伊沢がそういうと皆の視線が池之宮に向かれる。池之宮は野球の評論本を見ていた。こちらの視線には全く気づいていないようだが、
池之宮「別に、普通じゃん。」
と小さく答えた。……これが普通なのだろうか…。




