第十一話 第三十九部 ホームランと敬遠
理嗚「れ、レフト下がれ!!」
真田「なっ。」
打球は力強くグングンと伸びていく。この当たりだったらホームランは確実だろう。高々とおおきな放物線を描いた打球はレフトのスタンド奥まで飛んでいった。ホームランだ。
新天「っし。」
「うおおおお!! 打った!!!」
スタンドは大喜び。新天も小さくガッツポーズをとって喜んでいた。私たちは拍手して新天を迎え入れた。
池之宮「ナイスバッティング。すごいスイングだったな。」
新天「お前にいわれたかないわ。でも…せんきゅ。」
そういって新天と池之宮はハイタッチした。そしてなお続く攻撃は六番の由紀に回ってきた。私も出番が確実にある。ヘルメットをかぶってバットをもってバッターボックスに向かった。しかし、私はキャッチャーの姿勢を見て驚いた。キャッチャーが座る気配は全くしない。たったままプレイがかかるのを待っている。由紀が入ってようやく試合が再開された。そして…。
パシン ボールワン!!
敬遠だ。このバッターを送って確実に抑えにいくという作戦だろうか。私はたしかにこの試合、活躍できた部分はバントしかない。そう思われてもしょうがないだろう。
パシン パシン パシン
ボールファ!!
由紀はゆっくりとバットをこっちに投げてバッティンググローブをポケットに入れた。全く怒っている様子などはなく、逆に喜んでいた。そういえば由紀は三盗も出来るほどの足の速さを持っていたはず。それなら…盗塁とかエンドランとかある。どっちにしても由紀なら塁に出れば確実に二塁まではいけそう。私は監督に出されたサイン通りにこなすだけ。
日下部「(二人ならコンビネーションが上手いからな…よし、ここはさらに賭けだ。)」
由紀「(期待されるのは嬉しいねー! でもいくらなんでも期待されすぎでしょ、私たち。)」
サインはヒットエンドラン。足を生かした作戦だけれども私にも期待をされている。これは何とか答えなければ。
シュッ
ダッ!
理嗚「やはり走ったか!」
シュゴオオオ
外角高めにボールが向かってくる。手を伸ばせば届く!!
ギィン!
新天「うまい。」
おっつけたバッティングで打球は一二塁間の一塁よりの綺麗な打球になった。よし、抜ける!
前田「らあ!」
バシン! アウト!
ファーストがダイビングキャッチでボールを捕球した。そしてファーストはすぐに立ち上がり、ファーストベースを踏んだ。
アウト!!
沖田「うわー、やられた。」
ダブルプレーをとられてしまった。なんと運が悪い結果になってしまったのだろうか。ちょっとくやしい。
日下部「ドンマイだ! 当てることは出来るから次は絶対に決まる! サインを出した俺が悪いのだからな。あとはピッチングを頼む!」
由紀「大丈夫、亜弓なら抑えられる。さっきのことはあまり深く考えず、ピッチングに集中して。」
亜弓「わかった!!」
そして次は八回のマウンド。ここからは未知の世界になってきた。




