第十一話 第三十七部 全力には全力を
岸柳「まじかよ…。」
小細工にはこちらも小細工で対抗した。ストレートと見せかけてカットボールを使って空振りを取った。ストレートが武器ならこういうのも武器になりうることができる。自分の武器は最大限に使わなければ。
友亀「ツーアウトー!」
ツーアウトまで進められた。しかし次のバッターはあの四番、真田だ。さて、どうやって抑えていけばよいのだろうか。
岸柳「すまねぇ。」
真田「俺が打ってくる。それで終わりにしてやる。」
理嗚「真田先輩! たのみます!」
真田「……しゃああ!!」
真田選手は大きく雄たけびを上げて、バッターボックスに入った。すごい気合と集中力で私を鋭くにらみつけている。私も負けずに目を逸らさず、集中した。サインは…ストレート。力には力を、押し付ける!
シュッシュゴオオオ
ブシィ! バシーーーン!
ストライクワン!
風を切る音がこちらまで聞こえてくるぐらい思いっきり振ってきた。甘いところ…いや、当たったら確実に持っていかれそうなスイングをしている。簡単には打たせたくない。
友亀「(なら…高めにストレートで釣ろう。)」
友亀が最初から高めに構えている。今のノビならまだこの球が有効に使える。それなら…高くてもいいから思いっきり!
シュッ シュゴオオオ バシューーン!
ボールワン!!
真田「(あっぶねぇ。)」
友亀「(見た!? それに…少しだけストレートの威力も弱まってきている気がする。ちっ、ここに来て疲れがたまってきたか!?)」
しっかりと見てきた。四番はそう簡単に抑えられないのだろうか。だとしても…目が追いついているわけではない。現にバットに当てられているのはさっきのカットを中心にしたものを覗けば変化球のみ! ならストレートは打たれない!
シュゴオオオオ ブン バシーーン! ストライクツー!!
友亀「ナイボー!!」
よし、追い込んだ。追い込めば精神的にもこっちが有利になる。だったら…有利にたったのを上手くつかって抑えれば!
友亀「(低めだ、低めのストレート。)」
由紀「落ち着いて! 亜弓ならいける!」
私は由紀の声の後押しもあって腕を大きく振り上げた。そしてたまった力を思いっきり…このボールに!
真田「(こんな簡単に終わってたまるか!)」
シュッ シュゴオオ ギィイイイン!
友亀「日高!!」
ものすごいスイングとともに大きな金属音が聞こえてきた。勘なのかそれとも本当に当てたのかわからないけれども、ストレートが当てられた。打球は私の上にふわっと浮き上がっていた。勢いはないけれどもものすごいバックスピンがかかっている。私は両手で構えてボールをしっかりと捕球した。
パシン アウトー!!!
府中「ナイスピッチャー!!」
三振は取れなかったけれども抑えることまではできた。スリーアウトチェンジになって七回の表の守りが終わった。でも…ここまで疲れることなく投げることができた…。すごく嬉しい!
亜弓「しゃああ!!」
私はベンチに戻る途中に腕を上げて喜んだ。その声にあわせてスタンドから同じように叫んでくれた。七回まで…抑えられた!!




