第十一話 第二十九部 三度目の正直
由紀「亜弓、大丈夫!?」
亜弓「私は大丈夫だよ。」
私は体についた土をポンポンとはたいてバットを握った。何処も怪我はない。腕を回してみたり、足を動かしてみたけれども全く問題ない。それよりも外された…。このキャッチャーさえている。頭のキレがいい。スクイズは外されたけれどもまだツーストライクツーボール。まだチャンスならいくらだってある。厳しい現状なのは知っているけれども…。ここで私がなんとかしなきゃ。なんとかしなきゃ意味が無い。良い気持ちでマウンドにいきたい!
日下部「(日高…! たのむぞ。)」
由紀「(うひょー、大胆な作戦だね。でも…チャンスかもしれない。)」
次に出されたサインもスクイズ。スリーバントと呼ばれるのをここでやるということなのだろうか。すごいプレッシャーがかかる。いやいや、こういうときはチャンスと思わなければ。相手だってスクイズだって読んでくるはずがない。それならストライクゾーンに必ずボールが来る。それなら…できる!!
理嗚「(よし、追い込んだ。これで後は振らせて三振だ。よし、ストレート思いっきり来い!)」
ピッチャーがうなづいてセットポジションに入る。サードとファーストの守備は定位置近くになっている。ショートとセカンドもさっきよりやや後退している。転がせれば大丈夫!
ピッチャーが足を…あげた!
由紀「(頼むよ亜弓!)」
ダッ!!
新天「走った!?」
涼香「この状況で!?」
理嗚「!?」
シュッ
ピッチャーがストレートを投げてきた。ストライクゾーン! 落ち着いてボールを見て…ここに!
コツン!
由紀「よし!!!」
打球は上手く殺して、サード側にころがった。私は打球の行方を少し確認してからファーストに走っていった。
亜弓「っしぁあ!」
私は走っている間にもガッツポーズと声をだした。それだけ嬉しかった。由紀はすべりもせずにホームイン。ファーストにボールが投げられ、私もタイミングよくセーフかなと思ったけれどもアウトだった。
由紀「ナイスバント!! いい場面で決めてくれたよ!!」
日下部「よし、よくやった。」
深沢「いい度胸してるな、日高は。」
理嗚「(なんてことだ…。こんな場面でスクイズってあるのかよ…。)」
真田「くそっ!!!」
真田選手が大きな声を出して叫んだ。でも…これは私が勝ったから私は喜ぶべきだ!
理嗚「(あんなに落ち着いていた真田さんが…。)」
佐奈「感情的になっちゃった。」
真菜「あの人は元々感情を表に出すタイプらしいね。」
レナ「アノヒト、無理に押さえ込んでたみたい。」
可奈「でもこの状況下でバントできたのはすばらしいよ。」
これで2対1。勝ち越しに…成功した!!




