第十一話 第二十四部 またもや勿体無い
真田「ちっ。(ここでこいつかよ。イヤだな。)」
理嗚「(ここで四番か…敬遠はできねぇ。ワンアウトだからまだあの六番に回る。あいつにだけは回したくない。ならゲッツーとるために賭けに出るしかない!)」
ここで四番の池之宮がバッターボックスに入った。ランナーは海鳳が一塁にいる。ここの作戦ならきっと打ってくるだろう。池之宮にバントは似合わない気がする。あとはしっかり打ってくれれば。
池之宮「(ストレートならまだ感覚残っている。初球からいこう。)」
ピッチャーがセットポジションに入る。
シュッ バシン セーフ!
一度ファーストに牽制する。盗塁しないするにしても海鳳のリードはなかなかの物だから気にはなる。良いプレッシャーの与え方だ。
由紀「亜弓はランナー気にしたりする派?」
亜弓「私は…サインが出るまではピッチングに集中する派かな。」
由紀「なるほどね。亜弓の性格からあわせてみればよいと思うよ。野球の性格から見てだけど。」
亜弓「じゃあ普段の性格からだったら?」
由紀「正反対。」
亜弓「ま、まあ間違ってないよね…。」
シューーー グン バシーン!
ボールワン!
理嗚「(警戒は必要だけどいくらなんでも警戒しすぎだぜ。)」
真田「(お前にはわからないのか。こいつがそんだけ警戒しないといけないバッターだということを…。)」
友亀「なんていうのかな…ピッチャーとキャッチャーの波長が合っていないというか…。リードがかみ合っていない気がする。」
亜弓「え?」
友亀「目、離すなよ。池之宮のこの打席は必ずバットに当たるからな。」
シューーーー バシーーン! ボールツー!!
真田「ふぅ…。(冷静になれ…。自分のペースを保っていくことが大事だ。)」
池之宮が大きくゆったりと構えている。ここからでもピリピリとした雰囲気は伝わってくる。さて…次は何を…。
シュゴオオオオオオ
理嗚「(低めの厳しいコース! これは決まる!)」
池之宮「(振れ!)」
ギィイイイイン!!
栗山「よっしゃ!!」
打球はショートの左真横にものすごい勢いで飛んでいく。
中山「これは長打だ!」
東山「らあああああ!!」
バシーーーン!!
芦毛「とった!!」
ショートが飛び込んで、ダイビングキャッチをした。やばい、これはゲッツーになってしまうかもしれない。
東山「境!」
バシン! アウトー!
倒れたままの体制でセカンドに送球した。それが海鳳がセカンドに到達する前に間に合ってしまった。そしてファーストへ送球する。ランナーは池之宮だとわかると…。
バシン! アウトー!!
理嗚「ナイスショート!!!!」
ピッチャーは声は出さないものの、右手でガッツポーズを取った。これでスリーアウトチェンジ。この回も勿体無い形で終わってしまった。




