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ドクターK少女  作者: レザレナ
第一話 少女、全力投球
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第一話 第二部 由紀と弁当

「え?あ、うん。」

 私は思わず返事をした。でも暗い表情で返事をしてしまった。確かに野球部にいたことは確かだし自己紹介でもいたと言ってしまった。けど今は正直野球をやることに抵抗感がある。もうやりたくない、マネージャーでもいいかと思っているほどだった。

 私の様子に感づいたのかわからないがショートカットの女の子が

「あれ?私なにか悪いこと言ったかな?」

 気遣うように私の方を見る。

「あ、ごめんね。大丈夫だよ。気にしないで。」

 笑顔を作りながら返事をした。

 自己紹介を終え、先生がほかの話をしていると、時間はすでにお昼を回っており、昼休みのチャイムが鳴った。なんとこの学校では入学式から昼休みがあり弁当食べる時間があるのだ。私は弁当をサブバッグから取り出した。誰と食べようか、そんなことを考えてたら、

「日高亜弓…だっけ?一緒に弁当食べない?」

 そう声をかけたのは前の席に座っていたショートカットの女の子だ。声をかけてもらえるなんて嬉しいことだ。

「え?私と?いいよ。」

「サンキュー!」

 そう言うと彼女は机を私の机にあわせた。そういえばはっきりと彼女の名前を覚えてないので聞いてみることにした。

「えっと…確か名前って…」

「あ、うち羽葉由紀だよ。よろしく。」

「羽葉由紀さん、か。」

「いいよいいよ、さんはつけなくて。」

「じゃあ……由紀ちゃん?」

「なっ!?」

 由紀は赤面しながら驚いた、そして椅子から立ち上がって大きな声で、

「ちゃ、ちゃんなんてつけなくていいよ!恥ずかしいから!由紀でいいよ由紀で!」

 周りが静かになり一斉に由紀に視線が集まる。そして由紀はさらに赤面して静かに座りながら、

「あ、ごめん。」

 と言った。周りは笑っていた。しかし馬鹿にするような笑いではなく、面白い人だなと思いながら笑っていた。でも私はいけないことをしたかなと思って、

「由紀ちゃん、ごめんね」

といったら

「だ、だからちゃんは言わなくていいよ…」

「ごめんごめん、…由紀?」

「なに?」

呼び捨てになったとたん元気な顔で返事をしてきた。気持ちの切り替えがはやいな。

「弁当たべようか。」

「いいよ!あ、そうだ。うちも呼び捨てでいいかな?」

「うん、大丈夫だよ。」

「ありがと!よろしくな!亜弓!」

「よ、よろしく」

そんな会話をしながら弁当を取り出した。

「お、亜弓の弁当美味しそうだね。」

「そうかな?ありがとう。一応全部自分で作ったんだ。」

「本当に!?すごいね!それに結構ボリュームあるね。えっとね、うちの弁当も量は同じぐらいあるけど、ほとんど残り物だよ。ほら。」

「おー。でも由紀の弁当もバリエーション豊富だと思うよ。」

「一部冷凍食品入ってます。」

「そうなんだ。」

会話がはずむ。こんなに早く友達ができるとは思わなかった。心配してたことは何もかも忘れているほどだった。

「そういえば亜弓って野球部入ったらピッチャーやるんでしょ?」

話している途中で、ふと由紀が質問してきた。私は食べ物を口に運ぼうとした箸を止めて言った。

「えっとね…野球部入っても野球はやらないかもしれないんだ。それに野球部に入るかまだ決めてないし。」

「え?そうなの?」

由紀は悲しそうな顔で見てきた。

「あ、でもまだわからないよ。実際見てみないとわからないし。ほら、見てみたらやっぱりやりたいって気持ちに変わるかもしれないし。」

「そうだよね!わからないよね!それはうちも同じことだし。」

なんとかごまかせた。正直な気持ちは野球をやったらまた中学時代と同じ思いをしてしまうのではないかという心配がある。チームのムードを悪くするかもしれない・それに全力で投げたくても投げれない。ネガティブな気持ちばかりが頭の中をよぎっていった。

「どしたの、泣きそうな顔して。」

「ないてないよ!」

「ふーん。このこの!笑顔見せてよ~」

「やめて、ほっぺつんつんしないで。」

私はこんなことされたが、嬉しかった。きっと由紀は周りをポジティブにしてくれる人、ムードを良くする人だと思った。その証拠に私の気持ちが少し楽になった気がした。由紀、ありがとう。


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