第八話 第四十九部 走り出して。由紀は寂しがりや。
私はこの試合を見てうずうずしてきた。動かずにはいられなかったのだ。私はすぐに運動着に着替えてダッシュで学校に向かった。暑い太陽の光を浴びながら汗を流し、ひたすら足を動かして前に進むことだけを考えた。
学校に到着すると私は監督に教えてもらった職員室のある場所に行って運動場の鍵をとった。そして運動場の鍵を開けてすぐにランニングマシーンの電源を入れた。あんなのを見せられたら私だってマウンドに立ちたくなる。そしてアナウンサーと解説の飯島さんの話を聞いて私の気持ちを後押ししてくれた。いつものペース、そしてやり方でランニングを始めた。
タッタッタッタッ………
私は由紀のことをふと思い出した。あの打席、一体どうしてあんなことになってしまったのだろう。すごく悲しそうな顔だった。何か悪いことでもあったのだろうか。何か聞いたほうが良いのだろうか。いや、無理に聞いて傷をえぐるような言い方は止めた方がよいだろうか? 私は悩みながらも走ることの勢いを落とさずに走り続けた。
亜弓「ふぅ…。」
一時間走り終えてゆっくりとマットの上に移動した。汗をたらしながら座る。前はぶっ倒れる感覚だったのに今では座るだけで大丈夫になってきた。スタミナが上がっている証拠なのだろうか。
ダッタッダッ ガチャン!
走る音が突然聞こえて後ろのドアが開かれた。私はびっくりして振り向くと由紀がそこにいた。
亜弓「由紀!」
由紀「亜弓……寂しかったよぉおお!!」
そういって由紀は私に抱きついてきた。そういうことだったのか。私は由紀の頭をゆっくりなでた。由紀はものすごく元気な人だけれども、本当は寂しがりやということだ。両親の件もあるからだと思う。私はずっと由紀に助けてもらっていると思っていたけれども、実は由紀も私に助けられていることがわかった。由紀、もう大丈夫だからね。




