第八話 第四十八部 勝負の世界。
試合が終わった。カメラが館川をアップで移す。館川がガッツポーズを取って整列に移動する。皆も大きな声で喜んでいる。スタンドは歓声でいっぱいだ。それとは対照的に打ったバッターはその場で泣き崩れていた。ベンチから出てくる人も涙を流し、流しながらバッターを起こそうとしている人もいる。スタンドは悲しさに溢れかえっていた。勝負の世界、ましてや高校野球ではどこでも起こりうること。けれども…やっぱりこの瞬間は少しだけ辛い。私に取ってみれば負けるのは当然悲しいけど、勝っても少しは寂しくなる。でもこれが現実。私たちは負けた人たちの分も頑張らなければならない。勝ち上がっていく物たちの宿命みたいなものだ。
審判「礼!」
したあああ!!
負けた高校はベンチ前に戻って整列。そして私たちのチームはホーム前に整列して校歌を歌う。この瞬間に勝ったと実感できる時でもある。私はその場にいないけれどもテレビに流れてくる音楽を聞きながら歌った。
皆「したぁ!」
校歌を歌い終えるとダッシュでスタンド前に移動する。応援してくれた人たちへの挨拶だ。私もその場にいる雰囲気になって礼をした。
アナウンサー『いやー、とても良い試合を見せてくれましたね。』
飯島『とても見ごたえのある試合でしたね。しかし松江学園は次の試合で誰を先発する予定なのでしょうか。あの三人の中から誰が選ばれるか楽しみですね。』




