第八話 第三十五部 タイム、代走伊沢。
そしてここで府中キャプテンだ。キャプテンならきっと良い結果を出してくれるだろう。…ってあれ? 監督がベンチから出てきている。まさか代打とかじゃないよね…。
日下部「審判、代走伊沢で。」
中山「伊沢! 出番だぞ!」
伊沢「はいっ!」
海鳳「思いっきり走ってこいよ!」
伊沢「まかせろ。」
ベンチ内からヘルメットを被って一塁ベースに向かってに走っていく人がいる。だ、代走!? でもランナーって…。
ウグイス嬢「松江学園、選手の交代をお知らせします。一塁ランナーの卜部くんに変わりまして、代走、伊沢くん。背番号20。」
ここで伊沢が出てきた。たしか足なら卜部先輩に負けないぐらいはあったはず。どんなプレーを見せてくれるのだろうか。
卜部「よし、頼んだぞ。」
伊沢「了解っす!」
卜部「あ、それと。」
卜部先輩は走りを緩めて伊沢の耳元に近づいた。何かの指示だろうか。
卜部「監督からの指示だ、いけるならいつでも盗塁しろと。大丈夫、お前の足と今日のキャッチャーピッチャーを見ていればお前ならできる。」
バシン!
卜部先輩が背中をそこそこ強く叩く。
卜部「よっしゃ、いってこい!」
伊沢「はいっ!!」
そしてベースにしっかりと付いて、ふたたび府中先輩がバッターボックスに入った。ゆっくりと府中先輩は構える。
アナウンサー『一年生の伊沢選手ですが、足が速いと聞いてますね。おっと、これは大きなリード。』
伊沢のリードが誰にでもわかるかのような大きなリードを取っている。あんなに大きくとっておいて大丈夫なのだろうか。
飯島『あのリードは問題ないでしょう。伊沢選手は足に相当な自信を持っているのでしょう。』
さすがにピッチャーも気になってしかたがない。チラチラと一塁を見て…。
シュッ
ほら投げた! でも…
ズザザザ バシン! セーフ!
たしかに全然余裕だ。ボールがピッチャーに返される。そしてもう一度セットに入る…ってさっきよりもリード大きい! さっきので余裕だとわかったらそこまで大きくリードするの!? これ引っかかったらアウトだよ!
スッダダダダッ
稲本「なっ!?」
能登「ランナー走った!」
あ、足を上げたとたんにスタート!? どんな神経してるの!?




