第三話 第七部 ほっぺ押し攻撃
友亀「大丈夫だ、気にするな。ストライクゾーンに投げればどうってことはない。」
そういわれるが、私のせいで負けてしまう。後ろで守ってる人たちがいるけどヒット性の当たりだったらバックも何も関係ない。怖い、何とかしたいけど…どうすれば…。
シュッ
友亀「うおっ。」
パシン ボール!
友亀「どうしたどうした?」
ダメだ、全力で投げれない。しかもボールをとんでもないところに投げてしまった。友亀だって困っているに違いない。
海鳳「日高、おちついて!」
伊沢「そうだそうだ、まだ一回もランナー出してないんだぞ。自信もって!」
由紀「リラックス! 亜弓なら大丈夫だよ!」
皆に励ましてもらってるのに腕の震えはおさまらない、周りに迷惑かけるだけだ。なんでいきなり恐怖を覚えてしまったのか自分にも分からない。ただ、体が言うことをきいてくれない。なんで…。
シュッ トッ パシン ボール!
今度はかなり手前でワンバウンドしてしまった。変わってほしい、マウンドから降りたい。二回目となると回りもカバーしてくれない。やっぱり私は…。
池之宮「ここまでかな…。」
池之宮の独り言が聞こえてきた。やっぱり私はここまでの人間なんだ。帰りたい、恥ずかしい。なんでこうなってしまうのだろう…。
由紀の心の中「どうしちゃったの亜弓。やっぱり前に自信をつけさせるために言った言葉は長続きしなかったのかな。アレだけすごい球投げれるのに体と心のつながりに関しては治りきってないみたい。応急処置的な言葉をかけたいけど、完全に体が言うことを聞いてくれないように見える。きっと亜弓もそう思ってると思う。でもどうすれば…、ダメだダメだ! ネガティブになっちゃだめ。いつだって私は皆を笑顔にしてきた。私にしかできないことなんだ。亜弓が一番辛いんだ。私たちがカバーしなくてどうするの!」
バシン、 ボールスリー!
由紀「よし、審判! タイムお願いします!」
審判「タイム!!」
ボールスリーになって由紀がタイムをかけ、私のところに向かってくる。友亀や内野の人たちも寄ってくる。怒られる、そうに違いない。先に謝っておかないと。
由紀「亜弓。」
亜弓「ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさい…。」
涙が出てしまう。恥ずかしくてたまらない。やっぱり野球なんか…。
米倉「別に俺たち怒ってないよ?」
亜弓「でも…。」
友亀「元のピッチングができるようにはげましに来たんだよ。」
亜弓「でも手の震えが…。」
伊沢「後ろには俺たちがいるから安心しろって。」
亜弓「でもさっきの当たり見たでしょ…。うっ…、完璧に…。」
新天「どんな打球でも捕ってみせるよ。」
亜弓「でも…!」
次の瞬間、由紀がうつむいていた私の顔をつかんで、私と由紀が見つめあうように向けた。そして、
由紀「うりゃ!」
ぷにーーっ
由紀はいきなり私の両頬を人差し指でおしつけてきた。
亜弓「な、何!?」
由紀「アハハハ! 見てこの顔、アハハハ!!」
友亀「ふふっ。」
伊沢「なんじゃこの顔! ハハハ!」
池之宮「…………プッ」
私は由紀の腕をつかんで押し付けてくるのをやめさせた。
亜弓「い、いきなり何するの!」
由紀「笑顔笑顔! 笑っていこう! そしてポジティブにいこうよ! 亜弓の球なんてそう簡単に打たれないよ。」
亜弓「でもさっき…。」
池之宮「あれは偶然だ。」
亜弓「えっ。」
池之宮「こっちから見ていたが、当たった瞬間目をつぶってたぞ。」
亜弓「そ、そうなの?」
私はキョトンとした。
池之宮「そう簡単に日高の球は打たれないよ。」
そういって池之宮は自分のポジションに戻っていった。
友亀「かっこつけやがって。」
伊沢「でも手の震えはとまったみたいだね。」
亜弓「えっ?」
わたしは思わず自分の右手を見てみた。本当だった。
新天「さっき羽葉がほっぺたを押し付けた後にはもう治っていたよ。…ぷっ、やべっ思い出しちまった…ぷぷっ。ツボった。」
亜弓「そうだったんだ。……というか最後のひどいよ!」
由紀「でもよかったね。」
亜弓「ありがとう。また助けられたよ。」
由紀「気にしないで。亜弓は仮に打たれても後ろには私たちがいるから。絶対亜弓を負け投手にはさせないよ。だから投げることだけ集中して。」
亜弓「うん、わかった。」
由紀「それじゃあ頑張ろう!……ぷぷぷっ。」
亜弓「あっ、笑わないで!!」
そういって由紀は自分のポジションに戻っていった。ほかの人も自分のポジションに戻っていき、試合が再開した。
海鳳「おーい、もう一度140キロ出してくれ!」
亜弓「変なプレッシャーかけないで!」
沖田「頑張れ!!」
私はこれだけ皆に支えられている。だからこそそれに答えるピッチングをしなきゃ。思いっきり投げる…。思いっきり!!
シューーーーーズバァン!!
ストライクツウ!!
また…全力で投げれるようになった。これならまた抑えられる。三振も…取れる!
シューーーブン ズバーン!!
ストライクバッターアウト!
芦毛「ックソ!」
亜弓「よし!!」
私は思わずガッツポーズをとった。
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