第七話 第四十六部 スタンドから…
亜弓「やった!!」
由紀「よっしゃ!」
ファールチップの空振り三振、スリーアウトで試合が終わった。二回戦、強豪と当たったけれども勝ち上がることができた。私たちは腕を突き上げて喜び、相手の人たちは泣きそうな顔や地面に力崩れるようにしゃがみこむ人までいた。私はいつみてもこの光景になれない。でもこれが現実なんだ。勝者と敗者が無ければ、スポーツなんて成り立たない。この人たちのためにも…勝ち続けなきゃいけない。
審判「整列! 礼!」
皆「シタァ!」
挨拶が終わると私たちは整列する。校歌を歌うのだ。やっぱり勝って校歌を歌うのはすごく嬉しい。私は笑顔になりながら校歌を歌った。
府中「挨拶行くぞ!」
校歌を歌い終わり、キャプテンが声をかけると走って応援スタンドまで向かった。目の前には真希や瞳、マネージャーの先輩方、チアガールの優衣たち、吹奏楽部、そして応援に来てくれた皆がいた。
府中「応援ありがとうございました!」
皆「ありがとうございました!」
パチパチパチパチ……
スタンドから大きな拍手が鳴り響く。
生徒A「日高!! ナイスピッチングだったぞ!」
生徒B「次の試合も見にいくよ!!」
スタンドから私の名前が呼ばれている。
真希「お疲れ様!!」
瞳「かっこよかったよ!」
千恵美「由紀もすごかったぞ!」
恵美「最高の試合をありがとう!」
美琴「選手の皆さん、お疲れ様!!」
スタンドにいるマネージャーたちからも祝福だ。私だけでなく由紀も、皆の名前も呼ばれていた。
優衣「すごかったよ!」
香澄「やった! やった!!」
久美「お疲れ様、ゆっくりやすんでね。」
スノーフェアリーのメンバーたちも汗を流して喜んでいた。私、応援の力で頑張れたよ。ありがとう。
蓮沼「亜弓ちゃん。」
蓮沼先輩がスタンドから呼んでいた。
蓮沼「頑張ったね。お疲れ様。」
亜弓「ありがとうございます。」
そのちょっと後ろには橋風もいた。声はかけてくれなかったけれどもすこし顔が笑っていた。
蓮沼「萌ちゃんもすごいねって言ってたよ。」
亜弓「ありがとうです。顔みてわかります。」
由紀「そろそろいくよ。」
亜弓「うん。」
私は由紀と一緒にベンチに戻っていった。
友亀「おっと、日高。ダウンのキャッチボールするぞ。」
亜弓「はい。」
私はゆっくりとボールを放った。やや疲れで腕が重くなっていたのがわかった。すぐにダウンを終えて、肩を冷やすアイシングサポーターをつけてグラウンドを後にした。




