第三話 第四部 初見ブレイカー
二回表の攻撃は五番の新天からだ。彼からも力強そうな気持ちが見える。どんなバッティングをしてくれるのだろう。
新天が右バッターボックスに入ると大きく肩をまわして構えた。芦毛先輩がセットから投げた。
シューーバーン! ストライク!
いきおいのあるストレートが低めに決まった。ボールを受け取るとすぐに足を上げ、投げた。
ググッ ブン! パシン!
ストライクツゥ!
カーブを空振りはしたが、キレのよいスイングだ。ボール一個分ずれてたという感じで、ボールが見えてないわけでもなく、タイミングも合っていた。そして三球目
ググッ キーーン!
快音のこしてセンターに打球が飛んでいった。しかし打球は真正面。
パシン アウト!!
海鳳「あっ、おしい。」
たしかに惜しかった。真正面でなかったら確実にヒットだった。
それにしても皆、最初から先輩の球に対応している。やっぱり皆の方がすごい人ばかりなのではないか…。
ワンアウトランナーなしで、六番伊沢の出番が来た。伊沢はどんなバッティングをするのだろうか。ピッチャーが投げると伊沢はバントの構えをした。
コツン
三塁線への絶妙なセーフティーバントだ。しかし少し強かったようにもみえる。が、しかし。
ダダダダダ…
は、早い。それもとてつもなく。サードが素手でとって投げるが間に合わず。
セーフ!
海鳳「はやいっ!」
米倉「やるじゃんあいつ。」
味方ベンチ「ナイスセフティ!!」
伊沢もすごい人だ。あんなに足が速いなんて。やっぱり私よりすごい人はたくさんいる。私にも今は自信がもてるところがあるけど、打たれたら…、それで終わりなんだろうなあ…。
池之宮「日高。打撃の準備してきな。」
亜弓「あ、はい。」
池之宮に呼ばれた私はヘルメットをとりにいった。
そして次は七番由紀の出番が来た。
由紀「お願いします!!」
お辞儀しながら大きな声で挨拶すると左バッターボックスに入ると広いスタンスをとって構えた。しかもよく見るとバッタボックスの前に立っていた。打撃はさっき見てすばらしかったが、由紀はソフトボール出身で上手投げになれていないはず。それなのにいきなり前側に立つとは。私はわくわくしてきた。
芦毛先輩は府中先輩の出したサインに一回、二回と首をふりうなずくとランナーを全く見ずに投げた。
グググッ
大きく曲がるシンカーだ。
キーーン
亜弓「えっ。」
芦毛「なっ。」
府中「うそっ!?」
由紀の打った打球は一・二塁間を破ってライトに飛んでいった。
味方ベンチ「ナイスバッティング!」
それだけでは終わらなかった。打った後に走ったのにもかかわらず伊沢は二塁を蹴って三塁に向かった。
府中「ライト! とったらサードだ。」
府中先輩が指示をした。
中山「うりゃ!」
ライトの中山先輩から好返球がやってきた。伊沢はヘッドスライディングをし、サードの野中先輩がボールを取るとタッチしにいった。判定は…。
セーフ!
セーフ、手の方が早かったみたい。
味方ベンチ「ナイスラン! 伊沢!」
二人ともすごい。伊沢は打った瞬間に走ったのにもかかわらず、サードまで行ってセーフになる。由紀も初球のシンカーをたたいてライト方向へ引っ張った。あんなこと、普通にできるようなことなのだろうか…。やっぱりすごい。
次は八番の友亀だ。友亀がバッターボックスに入る前に素振りをしてると、
海鳳「おーい、打たなきゃどうなるか分かってるよな!」
友亀「勘弁してくれよー。」
そんな会話をしながらバッターボックスに入った。リラックスした構えだ。
芦毛先輩が足を上げると由紀は走った。
パシン! ストライク!
投じた球はカーブ。もちろんキャッチャーはセカンドには投げず、由紀は盗塁成功。これでワンアウト二・三塁だ。芦毛が足を上げ思い切り投げた。
シューーキン!!
低めのストレートをたたいた打球はサードへ…。
パシーーン! アウト!
野中先輩ががっちりとライナーを捕球した。サードランナーの伊沢は急いでサードに戻る。しかし、
アウト!!
友亀「うそだろ!?」
味方ベンチ「ああ~…。」
府中「ナイスサード!」
芦毛「さんきゅ! 野中。」
アウトになってしまった。あまりにも早い打球だったので、伊沢は戻れず。これでスリーアウトチェンジになってしまった。