第七話 第四十四部 本当の四番とは…。
由紀「おぉう。けっこう前の方に守られちゃったね。」
由紀が右バッターボックスに入るとかなり不思議な守備隊形をとった。外野はかなり前。そして内野はやや後ろに守っている。由紀のバッティングは折り紙つきだがパワー不足なはず。その欠点を突くかのようなシフトだ。
由紀「それなら…。」
由紀はゆっくりと構えた。いったい何を考えているのだろうか。
シュッ!
スッ
あっ、セーフティーバント!! しかも右打席からの!?
コツン
由紀「ならこれよ!」
そういってダッシュでファーストに向かっていった。とても速い。
佐藤「くそっ、間に合え!」
キャッチャーが素手で握り、全力でファーストに投げた。
ダン バシーーーン!
セーフ!
由紀「いっえーい!」
亜弓「ナイス由紀!!」
私はここで確信できた。由紀のバッティングには一分の隙もないぐらいすごいということが。もう誰にも止められないのだろうか。由紀はガッツポーズをとっている。そして笑顔が可愛い、口には出さないけれども。
続く海鳳にも特別なシフトが捕られ、もうヒットを打たせないようなシフトを捕られた。その間に由紀は二塁に盗塁し成功するが、海鳳の打球がよかったものの、特別なシフトのせいでセンターライナーになってしまった。これに怒った海鳳が8回のピッチング、八番と九番を二者連続奪三振をとった。次のバッターは一番にもどってあの古川だったが、ファーストゴロで簡単にスリーアウトを捕った。こう見るとコントロールがいかに重要か、がわかる。私も後半になってもコントロールがつくように練習しなければ。
そして八回の裏は五番の池之宮からだ。この打席に入る思いは並なものではなく、威圧感がすごかった。相手投手もこのプレッシャーには耐えられなかった。
ギィイイイイイイイン!!!!
海鳳「あっ、行った。」
亜弓「ホームランだ。」
私たちは口をあんぐりしていた。完全にホームランだ。
池之宮「っし。」
池之宮がガッツポーズをとった。ホームランで点差を開き、とても嬉しい。チームメイトも喜ぶべきところなのだが、言葉が出ない状況になった。その理由は飛距離がものすごかった。打った瞬間ホームランとわかったが、打球がグングンと伸びていき、左中間で場外まで運んだ。あんなパワーのあるバッターはプロ探してもそういない。やはりあれは五番という打順じゃあまりにも目立たない。池之宮こそ本当の四番バッターだろう。




