第七話 第三十八部 初ファーボール
六回の最初のバッターは七番の佐藤からだ。ストレートのコントロールが定まらなくなった今、変化球も使っていかなければ。初球はスラーブを外角に…投げる!
グググッ
バシン
ストライクワン!
よし、ストライク。綺麗に決まった。これなら抑えられる。
佐藤「(星田の言ったとおりだ、ストレートを狙ってはダメだ。狙うは変化球のみ! 追い込まれる前に打て!)」
次はストレートを低めに!
シュゴオオオオオ
バシーーン
ボールワン!
やや低すぎただろうか。次は低めにサークルチェンジを…投げる!
シュボッ
佐藤「(この球!)」
キィイイイイイン!
亜弓「あっ!」
ボールが私の足元を抜けて二遊間に転がっていった。
卜部「米倉、お前だ!」
米倉「うっらあああ!」
ズザザザ バシン!
ダイビングキャッチ! センターに抜けず米倉が捕球してくれた。そしてすぐに立ち上がるとファーストに送球した。
佐藤「このっ!」
ズザザザザ… バシン!
バッターランナーが飛びつくと同時にファーストが捕球した。判定は…。
アウトーーーー!
米倉「よっしゃ!」
池之宮「ナイスショート!」
佐藤「くそっ!」
新天「ワンアウトだよ!」
味方のファインプレーでアウト。これでワンアウトになった。でも悔しい。普通なら抜けても良い当たりだった。連続奪三振も途絶えてヒット性の当たりまで打たれた。でも私は…投げきらなきゃ!
友亀「(目がまだ輝いている。投げれる気力は十分! いける!)」
そして次は八番の高橋に回ってきた。次はすぐにストレートのサインを出した。ストレートでさっきの攻め方の意識を消すためだろうか。ミットめがけて!
シュゴオオオオオオオ
ズバーーーン!
ボールワン!
構えたところとは違う場所にボールが放られていた。やっぱりコントロールがすこし定まらないのだろうか。次もサインはストレート。内角なら問題ない!
シュゴーーーー
トッ バスン
ボールツウ!
意識しすぎて今度は低めに行ってしまった。なんでだろう、腕は振れているはずなのにコントロールだけがダメになってきている。
相手ベンチ「コントロール乱れてるよ! 見ていこうぜ!」
あんなふうに言われるなんて当たり前だと最近は思う。いままでの私だったらここで崩れていたはず。次もストレート。こんなことでは!
シュゴオオオオオオオオ
ズバーーーン
ストライクワン!
ど真ん中だがストレートが決まった。少し安心した。そして次はカットボールを要求された。内角に投げてストライクにする!
シューーーーグッ
バシーン!
ボールスリー!
曲がりが弱かったのだろうか、スリーボールになった。あせっちゃだめ、あせっちゃだめだ。次はスラーブを低めのストライクゾーン広くに。これなら大丈夫!
ググググッ
友亀「(低いっ!)」
トッ バスン!
ボールファー!
やってしまった。この試合初めてのファーボールを出してしまった。そして初のランナーを許してしまった。さらに言えば完全試合が消えていった。




