第七話 第三十五部 スローカーブ
由紀「いぇーーい!」
由紀はやっぱりすごい。こんなにセンスの塊に恵まれた選手は他にいない。プロを探してもいないかもしれない。私は由紀は「100年に一度の逸材」なのではないかと思った。そして次は海鳳。またチャンスで回ってきた。
海鳳「(サインは…送りバントか。練習も兼ねてかな。池之宮につないでやるぜ。)」
由紀「(隙があれば必ず戻る!)」
高野「(こいつには打撃がすごい。ストレートでまずカウントを稼がなければ。)」
シュッ
スッ
あっ、海鳳がバント!? ベンチにいる私たちは「えっ。」と声を上げた。高野も意表をつかれたようだ。
コツン
佐藤「俺が捕る!」
キャッチャーがダッシュで捕球するとサードをチラッとみた。しかし俊足の由紀。間に合わないと判断したキャッチャーはファーストに送球した。
バシン アウト!
無難に一つアウトを捕りにいった。そしてツーアウト三塁。ここで五番池之宮の出番が来た。池之宮の目には人一倍の威圧感が感じられた。
佐藤「(打撃結果だけ見れば勝負しても問題ない。しかし甘く行ったらやられてしまう。かといって避けたところで後ろはあの六番だ。それの方がリスクが高い。初球から決め球を使うつもりでいけ。)」
高野「(そうだと思ったぜ。0点で抑えて日高にどうだと見せ付けなければ気がすまない。それにこんなすごいバッターと対決できるんだ。ひくわけないだろ!)」
相手の高野はランナーを全く気にしていない。バッターから視線をはずさないでいる。勝負に行くつもりだ。
佐藤「(さぁこい。)」
相手投手が大きく足を上げると思いっきり投げた。
ズボッ
池之宮「なっ!?」
思いっきり投げたように見えたが球が抜けるように遅かった。しかしこれはただの遅い球ではない。スローカーブだ!
ブシィ!!! バスン!
ストライクワン!




