第七話 第二十部 キャプテンの意地
府中「羽葉。」
由紀「はいっ。」
府中「俺が打てなかったら後ろは任せたぞ。俺は勝負しにいく。」
由紀「まかせてください。その前に…ホームラン頼みます!」
府中「まかせろ!」
府中先輩がバッティンググローブを調節しながらバッターボックスに入っていく。何か他の人にはない雰囲気がピリピリと漂ってくる。私が投手だったらどう感じるだろう。きっと気迫で押し寄せられそう。本当に味方でよかった。心強い先輩、そしてキャプテンである。
府中「(あいにく俺は粘って打つタイプではないのでね。けりをつけさせてもらうぜ。)」
星田「(ここは初球から勝負だ)」
ピッチャーがセットポジションに入る。セカンドランナーには俊足の卜部先輩。外野の良い位置に飛べばホームまで帰って来れそうだ。
シュゴオオオオオ!
バシーーン!
府中「(初球から勝負してきたか。)」
は、速い。明らかに勝負を仕掛けてきた。ここで流れを止めるつもりだ。頑張って、府中先輩!
シュゴオオオ
ギィン! ガシャン
ファールボール!
ストレートを二球立て続けに投げて追い込まれた。キャッチャーは外に構える。一球そとにはずすかな?
シュゴオオオオ ズバーーーン
ボールワン!
あっぶない。ギリギリのコースをついてきた。けど府中先輩はピクリとも動かなかった。ボールが見えている証拠だ。
今度は…高めに構えている。釣り球かな。
シュゴオオオオオ ズバーーン
ボールツウ! ツーエンドツー!
これでツーストライクツーボール。平行カウントになった。ここから勝負をかけてくるだろう。先輩、頼みます!
ランナーとバッターがサインを確認するとどっしりと府中先輩は構えた。相手ピッチャーもプレッシャーを目一杯打者とランナーにかけている。ピッチャーが足をあげる。
伊沢「ゴー!」
ダッ!
卜部先輩が走った。これは…ヒットエンドラン!
シュッ ググググッ
しかもストライクゾーンに入るカーブだ! サードはセーフになりそう。そして打てば帰れる! 府中先輩!
府中「ふん!」
キィイイイイン!
一呼吸ためて打った打球は左中間方向に綺麗な弾道で飛んでいく。これは余裕で帰れそうだ。
佐藤「センターレフトバックバック!」
星田「おいおい、うそだろ。」
箕島「打球が伸びる!」
打球がグングンと伸びていく。風は無風だ。このままはいって!
ゴーーン!
グルッ グルッ
わああああああああああああああああああああああああ
やった! バックスクリーン左横にホームランだ! 入ったと同時に府中先輩がガッツポーズをした。
府中「っしゃあああああああああ!!!」




