第七話 第二部 元チームメイト、怒りは抑えきれず。
7月14日 市営大宮球場 11:10
もう少しで球場入場だ。でもその前にトイレに行きたい。というよりは手を洗いたいという感じがする。
由紀「頑張ってね。」
亜弓「う、うん。」
私はすでに緊張していた。しないほうがおかしい。だからその前に…。
亜弓「か、監督。いまのうちにトイレに行ってきていいですか?」
日下部「おう、いってらっしゃい。」
私は小走りでトイレの方へと向かった。
タッタッタッタ…。
トイレの近くにいくと相手チームの選手たちが数名いた。挨拶しなきゃ。
亜弓「こんにちは!」
?「ちわー。」
向こうも帽子を取って挨拶した。
?「あれ、日高じゃね?」
亜弓「えっ。」
私は顔を見ると少し身構えた。そこには以前の中学のチームメイト3人がいた。こんなところで会ってしまうなんて。
亜弓「よ、横山くんに高野くん。それに岡本くんまで…。」
横山「おう、久々だな。つかお前まだ野球やってたんだ。まだ全力で投げれないんだろ?」
やっぱり突っかかってきた。この人達に私の野球人生を狂わされたんだ。しかもよりによって今日の対戦相手高校なんて…。
高野「まあお前が野球をやっているところで試合なんて出れないだろうだがな、ははっ。」
岡本「お前がいなくなってせいせいしたぜ。こっちはもう思いっきり野球ができるからな。おかげで高野はベンチ入りだよな。」
高野「まっ、お前は一生スタンドで応援してな。」
笑ってくる。絶対に許せない。こんな人たちに負けたくない。私はこんなやつらに野球を終わらされたくない。こんなやつらなんか…。
亜弓「わざと負けるような選手が、試合で勝てるわけないよ!!!」
私は思いっきり大きな声で立ち向かった。
横山「ああっ、お前野球舐めてるのか? お前みたいなやつがベンチ入りなんか…。」
高野「おい、こいつ生意気にも背番号貰ってるぜ。しかも10だとよ。控えピッチャーだとよ!」
岡本「がっはー、笑わせるぜ。こんな奴が控え投手ならこの試合は余裕で勝ったな。」
亜弓「あなたたちなんかには絶対に打たせない!!」
高野「んあ? もしかしてお前この試合、先発か? ぎゃはははは!!」
横山「お前、おもしれえな! 冗談もほどほどにしろよ! まあ、そうだとしたらお前らに勝ち目はないけどな。」
岡本「それとも…お前をもう投げさせなくしてやろうか?」
ガンッ!
私を壁に追い詰めて壁にけりを入れてきた。怖い。助けて。殴られたくない。
高野「腕、折っとく?」
横山「いや、それはやりすぎだろ。爪を割るとか?」
岡本「お、それいいな。」
横山が私の腕を掴んでくる。
亜弓「離せっ!」
私は思い切り腕を振りほどいた。
横山「てめぇ!」
横山が腕を上げた。私は顔を守った。いやだ、こんなところで。
由紀「亜弓ー、どこにいるの?」
私は振り向くとそこに由紀がいた。
横山「ちっ、邪魔がはいったか。」
岡本「つかアイツもユニフォーム着てないか?」
由紀「こんちわっす。」
由紀は丁寧に挨拶をする。由紀をみると私は涙が流れてきた。
由紀「どした。」
由紀は相手チームのことをみると状況を察した。
由紀「おい、うちのチームのピッチャーに何してくれたんだ?」
横山「は? 俺たちはただ中学のとき一緒だったから挨拶しただけだよ。」
由紀「じゃあ何故泣いているの?」
高野「こいつのせいで俺たちの中学野球人生が台無しになったんだよ。だからちょっと渇を入れてただけだよ。」
由紀「あなたたちがこの子の心を壊した原因なのね。」
岡本「んだと!?」
そのとき、向こう側から敵チームの先輩らしき人たちが近寄ってきた。こっちにも真希と瞳がやって来た。
横山「あっ、古川先輩。こいつっす。俺たちの野球を台無しにしたやつは。」
古川「ほう、こいつかよ。ユニフォームまで着ちゃって。」
真希「亜弓!」
瞳「手、出してみな。あんたら死ぬよ。」
古川「んだとお!」
?「おいやめろ。」
相手の先輩の後ろにはもう一人男がいた。
古川「森! じゃますんじゃねえ!」
森「こんなところで問題起こしたって野球ができなくなるだけだぞ。それにこいつに手をだすんじゃねえ。あいつは柔道のジュニアオリンピックで優勝してるやつだ。喧嘩で勝てる相手じゃねえ。」
古川「……ちっ。」
そういって相手の選手たちは帰っていった。
瞳「亜弓、大丈夫?」
由紀「あいつら…絶対に勝ってやる!」
由紀は怒りが収まらない状況だった。野球でその怒りをぶつけるみたいだ。私もいつまでもあの人たちに人生を狂わされてはいけない…。私だって、変わるために野球をしてることもある。私だって。私だって!!!!!!
亜弓「由紀、……全部三振とってやる。」
私は絶対に打たせないと怒りをこみ上げていた。




