第二話 第五部 いざ試合へ…。
打撃練習をかねた守備練習が終わると、監督が皆を集めて言った。
「それでは、これから二・三年生たちと紅白戦をする。五回までを二試合だ。チームわけはこの紙に書いてあるからそれを確認してくれ。」
みなが驚く。それもそのはず。今日は体験入部だ。それなのに試合をやるなんて…。普通では考えられない。でもこれは現実なのだ…。
私と由紀は二試合目に出ることになった。由紀と一緒の試合に出れてよかった。
「一緒の試合にでれるね。がんばろう。」
由紀が声をかけてくれたので私も、
「うん!」
と返事をした。なぜか由紀がいると自分も元気になってくる。
「おっす。」
伊沢が声をかけてきた。どうやら伊沢も二試合目らしい。
「ひとつ気づいちまったんだけどさ。」
伊沢が小声で私たちに言った。
「これ、実力で決めてるっぽいぞ。」
「えっ?」
私はまさかと思った。続けて伊沢が言う。
「だって見てみろ。二試合目に控えてる人たち。海鳳、池之宮、友亀推薦組の三人がいるだろ。県内では有名な福一シニアの三人もいるだろ。もしかして…俺たち期待されてるのか?」
よく見ると本当だ。でも…期待されてるととらえていいのだろうか?
それは一試合目が始まってから分かった。相手は二年生だけのチームに見える。又は二軍らしき人たちだ。ピッチャーは館川が投げている。…え? このままでは私は三年生、もとい一軍の人たちに投げるということだ。私の球は三年生に通用するのだろうか? 私は不安でいっぱいになった。どうやればいいのか、考えれば考えるほど不安になってくる。そう考えているうちにも試合はどんどん進んでいく。
ついに四回あたりまでどうすればいいのか考えたが、何も思い浮かばなかった。不安はどんどん大きくなっていった。そう考えている中、一人の選手に呼ばれた。友亀だ。
「俺が監督に指示されてこのチームのキャプテンとスタメンを決めることになった。これからスタメン表を見せるから確認してくれ。」
そういってベンチにスタメン表を置いた。
一番 セカンド 米倉
二番 ライト 沖田
三番 センター 海鳳
四番 ファースト 池之宮
五番 サード 新天
六番 ショート 伊沢
七番 レフト 羽葉
八番 キャッチャー 友亀
九番 ピッチャー 日高
打順は気にしていないが、本当にピッチャーとは…。
「相手は二・三年のスタメンメンバーだ。気合入れていくぞ!」
「おお!」
皆が気合をいれる。でも私は大きな声を出せなかった。スタメンメンバー…そんな人たちに私の球が通用するのだろうか。そんなことばかり考えていた。
「えっと…日高さんだっけ?」
「え、あ、はい。」
友亀に話しかけられた。
「俺がキャッチャーやるから。サインだけ決めよう。」
「うん。」
私は友亀とサインを決めていった。その途中で私は、下を向きながら、
「私、打たれたらごめんね。」
と弱音をもらしてしまった。自然に悲しい顔になってくる。すると友亀が、
「え?大丈夫だよ。いい球持ってるし、打たれないようにリードするからまかせな。バックだっているんだから。」
と助言してくれた。さらに由紀が横から、
「まあ、亜弓の球はそう簡単に打てるようなもんじゃないから。がんばって!」
励ましてくれた。ありがとう。本当にありがとう。私は意識していないのに涙が出てきた。
「おいおい、なくなよー。これから試合だってのに。」
前から伊沢が話しかけてきた。
「だって…私…。」
すると横から海鳳が声をかけてきた。
「さっきピッチング見てたけど、女性であんな球投げれるなんてすごいやん。期待せずにはいられないぜ?」
海鳳までにもほめられた。私は頑張るしかない。そこまで言われたらもう全力で投げるしかない。私は決心した。期待にこたえられるようなピッチングをしよう、と。
一試合目が終わった。結果は二対二の同点で終わった。館川は五回四安打二失点という結果で、三回までパーフェクトピッチング、おまけに六奪三振というとても良い結果だった。
そして…いよいよ私たちの出番が来た。
そのころ瞳と真希はマネージャー入部希望者の部屋についた。そこをあけると、
「野球部のマネージャー希望者かな。いらっしゃい。」
小さな金髪の青い目をした女性が腕を組んで立っていた。




