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ドクターK少女  作者: レザレナ
第二話 スーパー一年生
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第二話 第四部 その少女、ブルペンにて。

 ブルペンにつくと既に二人がアップをしていた。といってももうすぐキャッチャーが座りそうなぐらいエンジンがかかってるように見える。そろそろアップは終わりになるのだろう。

 シューーズバン!

 一番右で投げている人が館川という人らしい。まだ全力ではなさそうだが、それでもとても良い球を投げている。

 真ん中にいるのがあの海鳳だ。ピッチャーもできるのか。

 バシン。

 こちらは館川ほどの勢いは無いが、キャッチャーの構えてるところにボールが吸い込まれていくようなコントロールの良さだ。

「亜弓。アップするよー。」

「あ、うん。」

 私たちもアップを始めた。

 パシィン。

 由紀のミットから良い音が聞こえる。これは私の推測だが、由紀は何でもできそうな気がする。なぜなら、メインポジションでもないのに何年もキャッチャーをやっているような構えだ。しかも良い音を続けて出すということは、それこそキャッチングを知り尽くしていないとできないことだ。それをいともたやすくできる。これは由紀の本当の凄みなんだと思う。

「すわるぞ。」

 館川がキャッチャーに指示した。これから本気で投げるだろう。私は横目で見た。

 シュゴーーパアァン!

 サイドスロー気味のスリークォーターから放たれたボールは力強い勢いでミットにおさまった。しかも速い。130キロ半ばは出てるだろう。

 ある程度私もなれてきたので力を入れていった。その間に隣の海鳳もキャッチャーを座らせて投げていた。やはりコントロールがすごい。この人もメインのポジション以外もこなせる人なのだろうか。

 シュゴーーーズバーン!

 相変わらず館川は良い球を投げている。私はすごいなと思いながらも、レギュラーを取れるかどうかの心配もでてきた。いや、ベンチ入りすら危ういかもしれない。

「亜弓、まだうちはたってるけど、八割ぐらいの力で投げて。」

 由紀が大きな声で私に伝えた。八割…。私がモーションを始めるとブルペンにいる人たちが私を見る。緊張する。でも…。私は由紀のミットめがけて投げるだけ!

 シュゴーズバーン! 

「おおう、はえぇ。」

 となりにいた海鳳がつぶやいた。あの海鳳が私の球を見て速いといってくれた。うれしい。本当に私の球は高校野球で通用するのか、と少し期待した。そのあと五・六球投げた。

 そしていよいよ由紀が座る。

「おもいっきり投げてね!」

 由紀が大きく構える。体は小さいはずなのに、なぜか大きく見える。これも由紀の力なのか。これなら私も思い切り投げれる。

 腕を上げ、左足を上げる。踏み込んで、思い切り…投げる!

 シュゴーーズバーン!

深沢「なっ!?」

海鳳「はやっ。」

館川「まじかよ…。女性でそんな球なげれるのかよ。」

 思い切り投げた球はものすごい勢いで由紀のミットにおさまった。私の見た限り館川と同じようなスピードで投げれていた。私にもこんな力があるなんて…。周りの人も私自身も驚いた。

 その後もストレートを十球ほどなげた。さすがに海鳳や館川は自分のピッチングに集中していたが、コーチは私の球を見ると毎回のように驚いていた。

「亜弓、変化球投げてみて。」

 いきなり由紀が輝いた目をして言ってきた。投げれる球…。

「じゃあ、まず…カットボール。」

「あいよ!」

 由紀が構える。私はそこに向かって投げるだけ!

シュッークッパシーン!

「いいよ!いい感じで曲がってる!」

 由紀がほめる。コーチも私の球を見てうなずいている。そんなに私の球が良いのだろうか。

「ほかにどんな球投げれる?」

 由紀が聞いてきた。

「えっと…スラーブと、チェンジアップと、サークルチェンジ。」

「変化球四つも投げれるの!?」

 由紀が驚いた。しかしすぐに目つきを変えて構えた。私はストレートと変化球をまぜて三十球ぐらいなげた。

 ダウンを終えるとコーチがよってきた。

「いやーすごいね、いい球持ってるよ。三振の取れるピッチングができるわけだ。」

 そういって私の肩をポンッとたたくとコーチはグラウンドに戻っていった。

「な、言ったとおりだろ?」

 と由紀が言った。

「私にはどんな武器があるの? おしえて!」

 私は自分では考えられないようなハイテンションになってなって由紀に聞いた。

「うーん、帰りに教えてあげるよ。」

「えー?教えてくれたっていいじゃない。」

「だって…いいじゃん!」

「なにそれ~。」

 そういって二人は笑いながらグラウンドに戻っていった。


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