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おまけ召喚 第四部 紅の女王の帰還  作者: 草野 瀬津璃
第十四幕 反撃ののろし
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七十八章 カウントダウン 2



 夕食をとった後、流衣達の部屋で説明会となった。

 話を聞き終えたアルモニカは、あっさりとした感想を返した。

「女王陛下の盟友、カルティエ様の仕業なら仕方ないな」

 うんうんとしきりと頷きながら、更に付け加える。

「長くを生きられておられる黒竜じゃ、何かお考えがあったのじゃろう」

「いや、単にミスっただけっぽかったぜ?」

 リドが口を挟んだが、アルモニカは聞いていないようだった。

「ディルの為に反乱軍に入ったのなら、反論する理由もない。で、ワシは何を手伝えばいい?」

 わくわくと目を輝かせるアルモニカを見て、流衣達はさっと目を見交わした。

「どうしよう、リド。アルがやる気になってる!」

「面倒くせえな。一番動いたらまずい奴だろ? どうするんすか、セトさん」

「君達、困るとすぐに私に意見を求めるのはやめなさい。さてどうしたものか」

 目で語り合ったところ、結局、セトが口を開く。

「そういえば、城への忘れ物申請はどうなったのかね?」

 サーシャは首を横に振る。

「いえ、まだお返事を待っているところですわ」

「だったらその返事次第で、可能なら受け取りに行って欲しい。それ以外は、目立つ行動は控えるべきだからな、宿で待機だ。アルモニカ嬢、ルイを帰す為の魔法陣について、君も知恵を貸してもらっても構わないかね?」

 アルモニカを室内で大人しく待機させつつ、長所を生かしてのける素晴らしい切り返しである。

 セトに対し、流衣とリドは内心拍手喝采した。

 この提案に、アルモニカも満更ではない様子で頷く。

「うむ、もちろん構わぬぞ。セト先生の補佐とは光栄じゃ」

「わてに答えられる範囲であれば、もちろんお手伝いいたしマス。坊ちゃまの為ですからネ」

 オウム姿のオルクスが、胸のほわ毛を強調するようにふんぞり返った。

 偉ぶっている様子も可愛いと、流衣は笑顔になる。

「僕も頑張ります。よろしくお願いします」

 リドはぐっと拳を握って宣言する。

「俺は偵察の方に集中するよ」

「わたくしも、日中は噂を集めに出かけてまいりますので、お嬢様のことをどうかよろしくお願いします」

 サーシャの頼みを、セトは快く引き受ける。

「分かったが、今の王都は危険だからな。無茶はしないように、神殿を中心に行動してくれ」

「畏まりました」

 全員、顔を見合わせ、気合とともに頷く。

 それぞれが自分のやるべきことをしようと、心に決めた瞬間だった。


     *


 分厚い灰色の雲から、白い雪が舞い降りてくる。

 リドは一人、防寒着を着こんで、開け放した窓辺に座っていた。他の者達が男部屋の方に集まっているので、代わりに女部屋にいる。

 真冬に窓を開けている為、皆がいる場所でこれをすると、仲間が風邪を引いてしまうのを気遣ってのことだ。

 冷たい風が頬や髪を撫でて吹き付ける。

 リドにはとても清々しく、心地良い。

 その時、風がカーテンをふわりと揺らした。

 リドは閉じていた目を開ける。風の精霊によれば、ディルはまだ夕闇の塔にいるようだ。

 無事を確認出来たので、ほっと一息つく。

「おい、クソオウム。夕闇の塔の最上階。西側の、外から見て左から二番目の個室だ」

「クソは余計です! 他に気を付けることは?」

 椅子の背にとまっていたオルクスは、リドの報告を聞いて、更に質問する。

「選別の門には近付くな、だと。使い魔だろうが魔物だから弾かれるらしいぜ」

 リドはそう教えた。風の精霊達はかなりからかって笑っているが、そこまで言うと絶対にオルクスが怒ると思ったので省略した。

 だが、オルクスは空中に向けて怒った。

「笑うんじゃありませんよ、うるさいデス! まったく、風の精霊ときたら、すぐに遊びだすのですから。こら、私の羽に触るんじゃありません!」

 リドには姿が見えないが、オルクスには精霊が見えているのか、自分の尻尾に向けて怒鳴りつける。

 その声が響いたのか、隣の部屋から流衣がやって来た。

「どうしたの、オルクス」

 心配そうな流衣に、オルクスは態度を一変させて大人しくなった。

「なんでもございませんよ、坊ちゃま。ただ、このやんちゃな精霊達をしかりつけていただけです。――だから触るなって言ってるでしょう」

 ぼそりと呟いて、オルクスは後ろに向けて蹴る仕草をした。

 

 ――きゃあ、第三の魔物が怒った

 ――こわーい


 リドの耳には、風の精霊が笑いさざめく声が届いた。

 流衣はよく分からないという顔をしたが、オルクスの後ろに何かいるらしいのは分かったのか、真面目な顔で話しかける。

「ええと、風の精霊さん? ディルを助けるのを手伝ってくれてありがとう」

 すると風が起こり、流衣の前髪を揺らして、外へと吹き抜けていった。

「どういたしまして、頑張るってさ」

 リドが伝えると、流衣は嬉しそうにする。

「そう、良かった。オルクスもよろしく頼むよ。僕は〈塔〉から持ってきた本を、頑張って読んでおくから」

「お任せ下さい、坊ちゃま! まずはこれから夕闇の塔に行って参りマス。ディルを励ましてまいりますので、ドウゾ勉学に励まれて下さい」

 ばさばさっと羽ばたく仕草をするオルクスに、リドはもう一度言う。

「夕闇の塔の最上階。西側の、外から見て左から二番目の個室だぞ?」

「何度も言わなくても分かってます!」

 間髪入れず言い返したオルクスは、流衣にぺこりと頭を下げる仕草をしてから、窓の外へと飛び出していった。

 流衣が窓辺に寄って、灰色の空にかすむ緑の孤影を見送る。

「ディルは塔にいるから、今のところは無事みたいだ」

「そっか、良かった……。オルクスが帰ってきたら、もっと詳しく分かるね。お疲れ様、リド。ここは随分冷えてるよ、凍えてるんじゃない? リドも隣の部屋においでよ、お茶を淹れるから、温まった方がいい」

「そうだな、一仕事終えたし、少し休憩するか」

 リドは腰掛けていた木枠から下りると、窓を閉める。

 そして、なんとなくもう一度空を仰いでから、流衣に続いて部屋を出た。


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