勉強と散歩
シュヴェル大陸には4つの国がある。
鍛冶の盛んなロードル、代々女王が治める魔術国家ベール、竜騎士を抱えるグラン、重装騎士団を持ち最も防衛力の高いボーデイ。
大陸の覇権を争うでもなく、4ヶ国は友好関係を築き平和であったといえる。
平和であったと言っても戦争が全くなかったわけではない。
4カ国間にも大昔とはいえ戦争はあった。大陸の豊かな資源を我が物と独占するために争い、大陸は戦火に見舞われた。国境は封鎖され、貿易は停止。国々は憎しみ合い殺しあった。
それが歴史に残る、大陸全土を巻き込んだ戦争であった。
しかし大陸内の戦争が終わっても戦火は外から舞い込んできた。他大陸が侵略してきたのだ。もちろん目当ては豊富な資源。
この大陸は周りを海に囲まれている。
だから必然と戦場は海上となる。
外敵との戦いは4カ国が組んで編成した4カ国連合が迎え撃つ。
水上でベールの船団が食い止め上陸を阻止する。そしてボーデイの重装騎士団が網を抜けてきたものを叩き潰す。他2国は援護しそれを撃退。そうやって協力して大陸を守ってきた。
数百年続く国家間の友好関係、容易く崩れるような脆いものでないのは侵略を食い止め、跳ね除けてきたことからもわかるだろう。
つまり4カ国の武力は国と大陸を守るために存在しているのだ。
シュヴェル大陸の歴史
「……ふぅ、疲れた」
読んでいた本を、パタンっと閉じ、ため息を吐く。
「歴史なんて勉強して、何になるっていうんだろ」
もう一度ため息を吐いて立ち上がり、窓を開ける。
窓を開けると、少し湿気を含んだ生暖かい風が頬を撫でる。
風に当たっていると、勉強をして憂鬱だった気分が少し晴れた気がした。
「んぅー……、よし!」
背伸びをして、頬をぱちんっと叩いて気分を変える。
「んーっと、あ、いた。おいでアルト」
クーリアは部屋を見渡し、声をかける。
「ぴぃ!」
すると部屋の奥のほうから仔竜がすっと飛んできてクーリアの肩に乗る。
「よしよし、じゃあ夜のお散歩に行くよ!」
クーリアはアルトの頭を撫でながら、窓から外に出る。
人里はなれた場所に、今クーリア達二人が住んでいる家がある。
二人で住むには少々大きい家だ。
あの日から数日クーリアは、気づいたらここにいた。だからクーリアはここがどこなのかよくわかっていない。サキさんに聞いても笑ってごまかすだけだった。
森の中にあるせいで、娯楽はほとんどない。
家にいるときは、勉強や作法などをやらされている。
何でこんなめんどくさいことをやらなきゃいけないのか!! と思いたって、抗議してみたら、
「必要なことですから(ニコッ)」
と、怖い笑顔で言われたので、僕はそれ以上の抗議はできずに蚊の鳴くような声で『・・・・・・はい』としか答えられなかった。僕、弱すぎ・・・・・・。
まぁ仕方ないから(逆らったり、サボったりすると怖いから)がんばって勉強をしているわけだ。僕偉い!
苦行を行った後に何のご褒美もないなんておかしい! って思うけどサキさんに言ってもきっとあの(怖い)笑顔で『ないです。(ニコッ)』って言われるのは目に見えるので、君子危うきに近寄らず、怖いものは見たくない精神で、アルトと夜の散歩に興じているわけだ。
もちろんサキさんには内緒で、怖いので。