ちょっと特別な朝(1)
ちゅんちゅん、ちゅんちゅんと外で小鳥が鳴いている。
まだ夜が明けてそれほど経っていない時間だ。
いつも僕はこんなに早く起きない。
普通は使用人が起こしに来るまで起きない。
起こしに来てもすぐには起きないけど。
そんな僕がなんで今日こんなに早く起きたのかというと、今日は僕の5歳の誕生日だからだ。
もう昨日から楽しみで楽しみで仕方がなかった。
夜寝るときでさえ、わくわくですぐには眠れなかったくらいだ。
そんなに何が楽しみかって?
それは今日やっと裏の森に一人で行くのを許してもらえるのだ。
少し前にお母様に裏の森に一人で行きたいといったらお母様は、最初は困ったようにしていたが僕が何度も言い続けたら、
「んー、なら5歳の誕生日がきたらいいわ」
と渋々約束してくれた。
裏の森に動物がいるのでお母様はきっと心配しているんだろう。
でも僕には魔術があるからいらない心配ってもんだ!
お母様は僕が魔術使えるの知らないと思うけどね。
裏の森なら、気付かれずに魔術の練習が出来そうだから、裏の森に一人でいけるようになるのは、すごく嬉しい。
部屋で魔術の本を見ながら小さな魔術は練習していたんだけど、もっといろんな魔術を試してみたくなったのだ。
今すぐに裏の森に行って、魔術を試したいけど、勝手に行ったら一人で行くのを禁止にされてしまうかもしれない。
だから今は我慢あるのみだ。
そして森に行ってやりたいことを考えながら、にやにやしているうちに半刻(約1時間)ほど経ちやっとみんなが起きてくる時間になった。
僕は森へ行く許しをもらうために一目散にお母様の部屋にむかった。
ダーッと効果音が付きそうなほど勢いよく走っていたら、
「あっお嬢様、廊下を走ってはいけません!」
と、使用人のサキさんが注意してきた。
サキさんは僕が生まれる少し前に働き始めた使用人さんだ。
えーっと確か16歳とかいってた気がする。
・・・たぶん。
今度聞いてみよう。
「早くお母様のところに行って裏の森に行く許しをもらいに行きたいの!」
サキさんの言葉に、僕は足を止めずに返事する。
「もう・・・お嬢様ったら・・・」
後ろでサキさんが、諦めた感じがするがきっと気のせいだ、うん。
あ、そうだ。
「サキさん、おはよう!」
あぶないあぶない、朝のあいさつを忘れるところだった。
しゅくじょたるもの朝のあいさつを忘れちゃだめだもんね。
……しゅくじょってなんだがよくわからないけど。
「あっはい。おはようございますお嬢様」
サキさんは一瞬驚いた顔をして、笑顔で返してくれた。
「じゃ、サキさんまたあとでねー」
僕はサキさんにビシッと敬礼して、今度こそお母様の部屋に走って向かった。
「ほんとにお嬢様は元気いっぱいですねぇ・・・」
サキさんはため息混じりにつぶやいて仕事に戻った。