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差し伸べられた手

作者: 白夜


 その手が差し伸べられたのは、これで三度目。

 

 

 

 

 一度目は滅びた村の中。

 たった一人生き延びてしまった私を連れだし、未来をくれた。

 生きるため、歩き出すために。

 蹲り動けないでいた私に、伸ばされた。


 すべてを諦めていた私を、生かしてくれた、手。

  

 大きくて暖かい手だった。

 お前はいい子だと、頭を撫でてくれた父の手とよく似ていた。

 力強く、無骨で。でも優しい、手。






 二度目は孤児院の庭で。

 魔術師が必要なのだと、言った。

 この国の未来を守るために共に来てくれ、と。

 それは私でなくても良いのだと、解っていたけれど。

 

 それでもその手が導く未来にいきたかった。


 長年剣を振るい続けた、無骨な手。

 骨は太く、皮膚も厚く硬いことを知っている。

 そしてその手がとても温かかったことも、知っている。

 

 剣技では並ぶ者がないと讃えられるほどなのに、どこか不器用な人で。

 包丁を持っても野菜の皮を剥いてるのか実を削ってるのか分らないような状態で。

 見ていて危なっかしいから手伝わないでいいです、と。

 笑いならが告げたのはいつのことだっただろう?

 

 

 

 

 

 そして、これが最後。




 三度目は、王都で。

 我らの忠誠を裏切った国に、報復を。

 

 その手の先に何もないことは、知っている。

 未来も夢も希望も、何もない。

 あなたは、あなたの心は、もう生きてはいない。

 

 

 

 

 そっと掴んだ手は、冷たくて。

 



 痛いとでもいうような表情をするあなたに、私は微笑めただろうか。




 

 

雰囲気小説です。

やっぱり一人称が書きやすい……。

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