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神のいない世界  作者: 折原 棗
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第1話 神を信じる世界

昔々、神様の存在をよくわかってない男の子と神様を一心に信じる女の子がいました。




「僕はマリアちゃんの事が好きなんだ。」


「ありがとう。でもごめんね……。嬉しいんだけど、ダメなの。」


「なんで?」


「私は神様に仕える身なの。私の心と身体は神様の物なんだ。だからダメ。」


「神様……?」


「そうだよ。神様は凄いんだよ!誰でも救って下さるんだよ!ママが言ってたの!」






これは神々への信仰が強い世界の物語。






「輪廻!!りーんーねっ!!起きろって!!」


私立海神高校1年B組の教室、窓側一番後ろの特等席に座り、太陽の恵みを一身に受け眠りほうける男子生徒は、友人によって無理矢理覚醒させられた。


「……んあ?」

「自己紹介、もうすぐお前の番だぞ!ってか初日に眠るってどうよ?」


そう言って小声で話すのは大野昴、明るめの茶髪の少年である。


「あ……ついね……。」

「ついじゃねーよ。ほらもう次だぞ。」

「ん、サンキュな。」


前に座る少女の自己紹介が終ると、担任から「次の人」と指示が飛ぶ。


「神谷輪廻です。よろしくお願いします。」


立ち上がってシンプル過ぎる自己紹介すると、少しのざわめきが起きる。恐らく『輪廻』という名前が珍しかったのだろう。本人は慣れっこと言わんばかりに何事も無かった様に着席する。


「簡単過ぎじゃね?自己紹介。名前しか言ってねぇし……。」

「そんなにアピールする事も無いだろ?」

「そんな事ねぇよ。見てろ!俺のナイスな自己紹介!」


そう言って、ナイスなタイミングで巡ってきた順番に、昴は意気込み立ち上がった。


「大野昴16歳、B型でっす!ネトゲが好きです、でも女の子はもっと好きです!いつでもメアド待ってます。よろしくぅ!!」


ハイテンション自己紹介を炸裂させた昴は、やり遂げた顔で着席した。回りの反応と言えば、昴を知ってる人間は飽きれ顔、初対面はドン引き。という結果になった。


「どうよ?俺の自己紹介。これで休み時間には俺の机の回りに女子が集まって来るぜ!」

「馬鹿っていいよね。羨ましいよ。」

「何をっ!?輪廻にはおこぼれすらやらねーからな!」


しかし集まってきた女子は皆、輪廻の机を囲った。世の女の子はお調子者より無口がお好みであると裏付ける事となった。

少なくとも見た目の問題……ではないだろう。共に上の中ぐらいの容姿である。茶髪の昴に対して、輪廻は黒髪、黒縁眼鏡という全く異なったタイプだ。


集まった女子達は、輪廻に対して色々と質問を投げる。別に無口を売りにしている訳ではないので、キチンと対応している。無口というより寧ろ、よく喋る方だ。それを隣の席で仏頂面で昴が眺めていた。


「不公平だと思う!」


帰り道、突然声を上げたのは昴だった。放課後に起きた出来事に不満が爆発した。輪廻がハーレムを作っている間、無理矢理乱入しようとしたが「邪魔!!」という女子の剣幕に負け、机に突っ伏していたのだ。


「何が?」

「顔は甲乙付け難いが、弱冠俺の勝ちだと思ってる。身長も俺のが高い!あとは何だ?眼鏡か!?俺に足りないパーツはその黒縁眼鏡なのか!?」


真剣に分析している昴の言っている事は、ズレているようで実は案外的を得ているのだ。

昨今の眼鏡男子ブーム。オシャレ眼鏡は男の容姿を二割増しにしてくれるという、画期的アイテムになっている。輪廻の黒髪眼鏡はインテリ風で、女子のツボに嵌まったのだろう。


「関係ないと思うよ?だって、眼鏡かけたって昴のバカさは隠しきれないと思うし。」

「何だとぉー!神様ぁー!今すぐこいつに天罰を下してやってください!!」


昴は両手を絡ませ顔の前で、祈りのポーズをした。


「ホント、馬鹿だね。神様なんているかよ。」

「罰当たりめ!信じる者は救われるって言うだろうが。お前はそのうち天罰が当たるに違いない!人を馬鹿にする罪でな!」

「当たってたまるか!神様なんていないんだよ。」


神谷輪廻は神を一切信じていない言わば『無神論者』だ。この国はとても信仰心が強い。本当に神様がいるかどうかは誰にもわからないが、国民の9割強が何らかの神を信仰している。輪廻の両親も信仰心は厚い。しかし輪廻に強要する事はなく「自分の信じる神は自分で見つけて欲しい」という信念で育ててきた。その為、輪廻には信仰する神がいない。更に無神論者へと後押ししたのは、初恋の少女への失恋だった。


「お前もいい加減に自分の神様を見つけろよ。無神論者なんてそれだけで罰当たりなんだからさ。」

「嫌だね。見た事もない奴に頭下げて祈るなんてナンセンスでしかないね。」

「ホント、罰当たりな奴。『輪廻』なんて仏教の教えと同じ名前のくせに。」

「俺が付けたくて付けた訳じゃない。俺だってこんな名前、いい迷惑なんだよ。じゃあな、また明日。」


歩いて15分程の所にお互いの自宅がある。少々、輪廻の家の方が近い。軽く手を挙げ帰宅した。

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