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ある死刑執行人の話
彼は去年の今ごろ亡くなった。
「亡くなった」という言い方はおかしいのかも、しれない。
なぜなら彼は殺人の罪で死刑になったのだから。
少し前は、死刑判決が出ると家族以外は面会も連絡もとれなかったが、最近になって、面会もできるように変わったらしく、彼から連絡をもらった私は、死刑判決後の彼に面会に行った。
前回、面会に行ってから8年近くが過ぎていた。
久しぶりに行った拘置所は近代化されて、映画に出てきそうなビルになっていた。
受付を済ませ、荷物を預けボディチェックをして中に入ると、薄暗く長い廊下が続いていた。
人はいなくて、ただひたすら廊下。
エレベーターホールにつき、エレベーターに乗るが落ち着かない。
確かかなり高層階まで登った記憶がある。
エレベーターを降りるとそこは明るく、窓もあり高層階なだけに見晴らしもある。
目の前に受付。ベンチが並んでいて、個室のドアがいくつか続く。
まるで病院のようだ。
番号を呼ばれ、指定された部屋に入り座って待っていると、アクリル板で仕切られた反対側の入り口から、彼と看守が入ってきた。
彼は少し恥ずかしそうな笑顔で、いつものように世間話をする。
私も彼も、これが最後だとわかっている。
ふと彼が「人を殺してから肉が食べられない」と言った。
彼の口から初めて聞く現実。彼の犯した罪。




