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テセウスの船はもう見えない  作者: 御守いちる


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26/29

8-5



僕はハッとして、目を見開く。

一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。


目を開くと、屋上も、光も、アリサの姿もなかった。

僕は、病室の前にいた。


千紗の眠っているベッドが、ガラス越しに見える。

入ってはいけないはずだけど、僕はかまわず中に入った。

横たわっていた千紗の目蓋が、ピクリと動く。

それから彼女の瞳から、涙が伝っていく。


「千紗……」

ゆっくりと、千紗の瞳が開いた。

「景」


僕たちは、もう視線が重なるだけで、何が起きたのかを完全に理解していた。

彼女は震える唇で、僕に告げた。


「……アリサが、消えた」


千紗は堪えきれなくなったように、しゃくりあげながらもう一度呟いた。

「私を残して……、アリサが、消えた」


そう言った千紗は、我慢できなくなったようだ。

声をあげて泣き叫んだ。

僕は彼女をきつく抱きしめる。


もう、二人とも分かっていた。

僕は千紗を選んだ。


だから千紗の魂は、帰って来た。

アリサの身体をこの世界に残したまま。


その代わりに、アリサの魂は消えてしまった。

全部、理解していた。



――もう二度と、僕たちはアリサに会えない。


「私、アリサと今までずっと一緒だったのに! 話せなくても、隣にいたのに。生まれてからずっと、一緒だったのに! 私のせいで……アリサが……っ」


僕は何も言えなかった。

ただただ、泣いている千紗を抱きしめることしかできなかった。






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