4-5
千紗を家に送ったあと、僕はベッドでうとうとして、眠ってしまった。
そして夢を見ながら、あぁ、これは夢だな、と分かる夢を見た。
真っ白でほんのりと明るい、何もない空間にいた。
気が付くと、少し離れた場所に、華奢な少女が立っている。
「アリサ!」
一目で彼女がアリサだと分かった。こちらに振り向いたアリサは、悲しげな表情で微笑む。
「久しぶりだね、景君」
ずいぶんアリサに会っていないような気がした。
僕は必死にアリサをつかまえようとしたが、彼女はやんわりと僕が触れるのを拒んだ。
「千紗と話せなかったから、景君のところに遊びにきちゃった」
にこりと笑った後、アリサは続けた。
「景君。千紗は、自分が消えるべきって言ってたでしょう?」
「うん。そのうちアリサに身体を返さないといけないからって」
「あのね、景君。千紗が必ずしも消える必要はないの」
「本当!?」
「うん。だけど、身体は一つしかない。だから、景君が選んで」
「選ぶって……」
アリサは僕の手を握り、笑顔で言った。
「私か千紗、どちらか選んでくれたら、きっとその魂が、この身体で生き続けることができる」
「そんなの、選べるわけないだろ! それ、つまり千紗かアリサか、結局どちらかは消えてしまうってことだろ!?」
「そうだね」
「そんな、どうにかならないのか!? 二人とも助かる方法はないのか!? 今だって、アリサの身体に二人の魂が入ってるんだろ!? だから、ずっと……二人で……」
それ以上、何と言っていいのか分からなかった。
「あんまり時間がないって、分かるんだ。景君、私は景君が、どちらを選んでもいいって思ってるからね。景君が私と千紗、どっちも死ぬほど大好きなことくらい、お姉ちゃんは分かってるんだから」
アリサがそう茶化すように言った声が優しすぎて、泣き出したくなる。
「だから景君が、ずっと一緒にいたいと思う方を選んで」
アリサの名前を呼ぼうとした瞬間、僕は目を覚ました。
伸ばした手の平は、何も掴めない。
気が付いたら、瞳に涙が滲んでいた。
二人のことを考えていたから、こんな夢を見たんだろうか?
僕は両腕で、自分の顔を覆った。
「選べるわけ、ないだろ……」
叫び出したい気持ちだった。
神様がいたら、目の前で文句を言ってやりたかった。
――夢の中くらい、すべてがうまくいってくれたっていいのに。




