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テセウスの船はもう見えない  作者: 御守いちる


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12/29

4-2

 

 

ケンカした翌日の朝、僕は千紗と一緒に登校しようと決意した。

スマホでメッセージを送る勇気さえ出せず、千紗の家の前で彼女を待っていた。チラリと腕時計を確認する。

まだ呼び鈴を押すのは早いだろうか。そもそも、話もしてもらえなかったらどうしよう。


迷っていると、アリサの部屋のカーテンが開いた。

そこから、千紗がじっとこちらを見下ろしていた。目が合い、僕は一瞬うろたえる。

千紗はすぐに姿を消してしまった。

やはり怒っているのだろうか。そわそわしながらどうしようかとその場で立ち尽くしていると、すぐに玄関から千紗が現れた。


「おはよう、景」

「おはよう、千紗」


いつも通りだ。千紗の表情からは、彼女がどう考えているのか、判断がつかない。

でも、あからさまに怒っている感じではない。

よし、うやむやになる前に、きちんと謝ってしまおう。


そう決意した途端、千紗が口を開いた。

「景、あの、昨日のことだけど。……怒らせてしまって、ごめんなさい」

そう言って、千紗が頭を下げる。

自分から謝罪しようと思っていた僕の肩から、ふにゃふにゃと力が抜ける。


「謝らないでよ、千紗。僕は……怒ったんじゃないんだ。多分、悲しかったんだ。それも、千紗にじゃなくて。えっと……何もできない自分が悲しかった。悲しいっていうか……、なんだろ」

「無力感?」

「そう、そんな感じ。八つ当たりしてしまって、ごめん」


たどたどしく伝えると、千紗は顔を上げふっと微笑む。


「景、あなたは何もできなくなんてない。あなたが私とアリサのために頑張ってくれているのは、じゅうぶん伝わって来る。私はそれが、とても嬉しい。私の心は、それだけで満たされる」


心臓が、ぎゅっと締め付けられる。

僕は千紗のこういう所が好きなのだと思った。不器用すぎるくらい、千紗はいつだって誠実だ。


「ごめん、面倒くさいことばかり言って」

「景が面倒くさいのには慣れている」

「そうだね」

「それに、頑固なのは私も一緒」


その言葉に、僕も小さく笑った。


「じゃあ、仲直りだね」


そう言って僕は手を差し出した。

千紗は目をパチパチと瞬かせ、それから僕の手を握り返す。


「……うん、これで仲直り」

久しぶりに、千紗と手を繋いだ。それにケンカをしたのも、仲直りも久しぶりだ。


「でも僕は、最後まで諦めないから」

「分かった。ありがとう」


僕たちはしばらく手を繋いだまま、高校への道を歩いた。


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