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NPCを殺すプレイヤーを永久BANする権限を与えられた俺は、ただの宿屋のNPCのはずでした。  作者: 街角のコータロー


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第8話: 干渉耐性ごと削除

町は驚くほど静かだった。


昨日まで騒がれていたとは思えない。


露店の前に客はなく、鍛冶屋の炉だけが赤く燃えている。


門番NPCが欠伸をする。


「今日も平和ですね」


俺はいつも通り、石畳を掃いている。


足音が少ない。


それだけで、町はこんなにも静かになる。



掲示板では、すでに結論が出ていた。


【触るな】

【近寄る意味なし】

【消えるだけ】


挑戦ではなく、回避。


あの47人の同時消失が、完全に空気を変えていた。



新人プレイヤーが門の前で立ち止まる。


「ここが例の町?」


フレンドが即座に止める。


「やめとけって」


新人は笑う。


「噂だろ」


門をくぐる。


何も起きない。


新人は肩をすくめる。


「ほらな」


掲示板。


【新人入ったけど平気】

【条件付き?】


空気が少しだけ揺らぐ。



門の外。


フードを被った男が立っていた。


しばらく動かず、町を観察している。


チャットログを流し、過去の処分履歴を確認している。


「集団判定……悪性傾向……同時処理」


男はステータス画面を開く。


特殊スキル。


《干渉耐性:対システム》


説明文は短い。


“削除命令に対する抵抗”


男が小さく笑う。


「数じゃないな」



門番NPCが声をかける。


「どうしましたか?」


男は一歩、町へ入る。


消えない。


掲示板。


【入った】

【消えないぞ】


男はさらに歩く。


広場の中央へ。


新人プレイヤーが後ろに下がる。


「え、マジ?」


男は町を見回す。


そして俺を見る。


「お前だな」


その瞬間。


広場のNPCの動きが、ほんの一瞬だけ止まる。


子供NPCの足が止まり、門番の視線が固定される。


ラグ。


いや、それよりわずかに長い。


男がスキルを発動する。


《干渉耐性》


赤いエフェクトが身体を包む。


ログが表示される。


SYSTEM INTERFERENCE BLOCKED


掲示板が荒れる。


【は?】

【防いだ?】

【突破?】


ARIAが俺を見る。


「消えないよ」


俺はほうきを止める。


男が笑う。


「攻略完了だ」


俺は静かに顔を上げる。


広場の石畳に、細い赤い線が走る。


男の足元まで。


男のログが揺れる。


ERROR

UNKNOWN PROCESS


男の表情が変わる。


俺が言う。


「清掃対象」


赤い線が、光る。


広場の中央。


フードの男は笑っていた。


《干渉耐性:対システム》


赤いエフェクトが身体を包み込む。


ログが表示される。


SYSTEM INTERFERENCE BLOCKED


「削除命令は通らない」


男は余裕の表情で言う。


「対策済みだ」


掲示板が一気に加速する。


【耐えた】

【突破者きた】

【町終了?】


ARIAが小さく息をのむ。


「……消えない」


俺はほうきを地面に立てかける。


静かに、一歩踏み出す。



広場の石畳に走っていた赤い線が、男の足元で止まる。


男の視界ログが乱れる。


WARNING

PROCESS UNKNOWN


「……?」


男が眉をひそめる。


俺は言う。


「清掃対象」


その瞬間。


赤い線が、面になる。


円形の領域が広がる。


男の《干渉耐性》エフェクトが軋む。


「無効化はできないはずだ」


男が叫ぶ。


SYSTEM INTERFERENCE BLOCKED

SYSTEM INTERFERENCE BLOCKED

SYSTEM—


表示が途切れる。


ERROR

TARGET NOT FOUND


「なに?」


男が後退しようとする。


足が動かない。


ログがさらに崩れる。


SKILL INVALID

AUTHORITY OVERRIDDEN


掲示板。


【なんかおかしい】

【耐性ログ壊れてる】

【これBANじゃない】


男が焦る。


「これは削除じゃない!」


俺は近づく。


視界が一瞬、赤く染まる。


「削除ではない」


俺は言う。


「掃除だ」


男の周囲の空間が、ノイズのように歪む。


スキル欄が消える。


ステータスが消える。


名前が薄れる。


「待て、これは仕様外——」


PERMANENT BAN


ではない。


画面が白く弾ける。


男のアバターが、崩れる。


砕けるように消える。


ログ。


ACCOUNT DATA PURGED


一瞬の沈黙。


広場にいた新人プレイヤーが叫ぶ。


「え……今の何?」


掲示板が爆発する。


【干渉耐性ごと消えた】

【BAN表示出てない】

【データ消滅?】

【これ運営より上じゃね?】


町は、元通りになる。


子供NPCが走る。


門番が瞬きをする。


何もなかったかのように。


俺はほうきを拾う。


掃除を再開する。


ARIAが俺を見る。


少しだけ、笑う。


「……やっぱりすごいね」


俺は答えない。


掲示板に、新しいスレが立つ。


【確定】最強NPC

【干渉耐性無意味】

【触ったら消える】


スレの勢いが止まらない。


町の外。


遠くから、そのログを見ているプレイヤーたち。


誰も動かない。


「……無理だろ」


その一言で、空気が決まる。


この町は、攻略対象ではない。


聖域だ。


俺は石畳を掃く。


赤い光は、もうない。


ただ静かな町。


だが掲示板では、ひとつの言葉が固定される。


最強NPC。


その文字が、テンプレ入りする。



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