第24話 王位の解体宣言
王城大広間。
評議員、軍幹部、商会代表、主要貴族。
そして記録官。
全てが揃っていた。
隠さない。
閉じない。
今回の宣言は、密室で行わない。
それが私の選択だった。
*
「本日、第二次再編案を発表します」
ざわめきが広がる。
アーネストは最前列にいる。
リリアは商会席。
レティシアは軍列。
セラフィナも後方に立っている。
私はゆっくりと続ける。
「王任期制は維持します」
一部が安堵し、一部が緊張する。
「加えて」
沈黙。
「王族特権を廃止します」
空気が凍る。
「王家による世襲優先権を撤廃」
「王位は、完全選出制へ移行します」
ざわめきが爆発する。
「移行期間は三年」
「王位選出評議会を設置」
「候補資格、審査基準、弾劾制度を明文化」
言葉が大広間を打つ。
*
「王は血ではなく、制度に立つ」
「王は象徴ではなく、責任者である」
「そして」
私は一瞬、息を吸う。
「十年後、私は退位します」
完全な沈黙。
誰も動かない。
「王位は、ここで解体されます」
その言葉は刃だった。
王自らが、王を解体すると宣言する。
*
アーネストの拳が震える。
だが目は逸らさない。
リリアは静かに立っている。
レティシアは表情を変えない。
セラフィナは息を詰める。
*
「危機の中で改革を進めるのは愚かかもしれません」
「だが危機だからこそ」
「曖昧さを断ちます」
私は続ける。
「外圧で止めない」
「恐怖で凍らせない」
「王は永遠ではない」
「だが制度は続く」
沈黙。
重い、だが揺れない沈黙。
*
「異議のある者は」
私は言う。
「今ここで述べてください」
長い静寂。
やがて、アーネストが立つ。
「陛下」
「はい」
「王権は削られます」
「はい」
「威厳は薄れます」
「はい」
彼は深く息を吸う。
「だが」
視線が揺れる。
「王が自ら解体を宣言するなら」
「それは弱さではない」
ざわめき。
「責任だ」
静かな拍手が一つ。
やがて広がる。
強くはない。
だが確実な拍手。
*
リリアが続く。
「商会は支持します」
短い言葉。
市場は不安を抱えている。
だが明確な設計は、安心を生む。
*
レティシアも言う。
「軍は制度に従う」
それで十分だった。
*
夜。
王都の広場に声明が掲示される。
人々は読む。
「王位解体?」
「選出制?」
「退位宣言?」
驚きと困惑。
だが同時に、方向が示された。
曖昧さが減る。
恐怖が、少しだけ和らぐ。
*
セレスタ公国。
「王位完全選出制へ移行宣言」
ミレイアが報告する。
カイエルは長く沈黙した。
「……そこまでやるか」
「理念は我々に近い」
「だが」
彼は静かに言う。
「王が自ら制度を壊せば」
「王制はむしろ強くなる」
進化する王制は、倒しにくい。
*
王城、深夜。
私は一人、王冠を見つめる。
重い。
だが永遠ではない。
十年後、ここには別の者が座る。
血か。
民か。
それはまだわからない。
だが。
今日、王位は解体された。
象徴から制度へ。
威厳から責任へ。
静かな戦争は、次の段階へ進む。
王は終わる。
だが国家は、ここから始まる。
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