表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初代再編王ですが「王はいらない」と言われました ― 王制不要論と静かなる戦争 ―  作者: 桜庭ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/26

第23話 裏切りの証拠

 証拠は、偶然から始まった。


 港の税関で押収された書簡。


 偽装された商取引文書の中に、不可解な符号が紛れていた。


「解読できました」


 フィオナが淡々と告げる。


「内容は」


「王権強化と引き換えの経済圧力緩和案」


 評議室が静まり返る。


「差出人はセレスタ財務局」


「受取人は――」


 言葉が一瞬止まる。


「グラン=カリオ家」


 重い沈黙。


 アーネスト。


 *


「本人に確認を」


 アルヴェルトが低く言う。


「逃げる可能性は」


「低い」


 レティシアが即答する。


「彼は逃げない」


 私は頷く。


「呼びましょう」


 *


 執務室。


 アーネストは落ち着いた足取りで入室した。


「お呼びでしょうか」


 私は書簡を机に置く。


「これは何ですか」


 彼は目を落とす。


 一瞬の沈黙。


「提案です」


「密約です」


「実行はしていません」


 声は揺れない。


「燃やしました」


 正直だ。


「だが接触は事実」


「はい」


「なぜ報告しなかった」


「混乱を避けるためです」


 空気が張り詰める。


「混乱は今、起きています」


 私は静かに言う。


「あなたは王を守りたいと言った」


「はい」


「だが王に隠した」


 沈黙。


「外圧に屈する形で改革を止めれば」


 彼は言う。


「王は疑われる」


「だから迷いました」


 迷い。


 それが本音だ。


 *


「裏切りですか」


 彼は問う。


 私は首を振る。


「違う」


「だが誤りです」


 アーネストの拳がわずかに震える。


「王を守るための選択でした」


「王を守るとは、王の言葉を守ることです」


 沈黙。


「私は退くと宣言しました」


「それを外圧で曲げれば」


「王は信用を失う」


 彼は目を閉じる。


 理解している。


 だが受け入れきれない。


 *


「処分を」


 彼は言う。


「処分はしません」


 驚きが走る。


「なぜ」


「あなたは売っていない」


「実行していない」


「迷っただけです」


 私は続ける。


「だが評議には報告します」


「隠しません」


 透明性。


 痛みを伴う選択。


 *


 評議室。


 書簡は公開された。


 ざわめきが広がる。


「王族が外敵と接触!」


「非常宣言を!」


 強硬派が声を上げる。


 だが私は言う。


「実行はされていない」


「密約は成立していない」


「迷いはあった」


「だが売ってはいない」


 アーネストは自ら立ち、頭を下げる。


「軽率でした」


 沈黙。


 彼の支持者たちも言葉を失う。


 王族復帰派の正義は、揺らいだ。


 *


 セレスタ公国。


「密約は露見しました」


 ミレイアが言う。


「想定内だ」


 カイエルは静かに答える。


「王はどうした」


「処分せず、公開」


 彼はわずかに目を細める。


「強い」


 隠さず、裁かず、透明にする。


 それは王の自信。


 *


 王城、夜。


 アーネストは一人、廊下に立つ。


「私は何を守ろうとした」


 王か。


 威厳か。


 それとも自分の理想か。


 足音が近づく。


 セラフィナだ。


「あなたは王を裏切っていない」


 彼女は言う。


「迷っただけです」


 若い声。


「国を守る方法は、一つじゃない」


 アーネストは小さく笑う。


「君は単純だ」


「未熟です」


「だが羨ましい」


 *


 執務室。


 私は書簡を閉じる。


 裏切りは未遂で終わった。


 だが火種は残る。


 内部の亀裂。


 外部の圧力。


 市場の揺らぎ。


 軍の緊張。


 全てが同時に頂点へ向かう。


 第二次再編。


 もう先延ばしはできない。


 王は、自らを解体する決断を下す時が来た。


 裏切りの証拠は、破壊ではなく覚悟を促した。


 静かな戦争は、ついに核心へ到達する。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ