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初代再編王ですが「王はいらない」と言われました ― 王制不要論と静かなる戦争 ―  作者: 桜庭ルナ


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12/21

第12話 静かな戦争の始まり

 国境の地図に、赤い印が増えていく。


 補給線の延長。


 野営地の拡張。


 演習は、演習のまま。


 だが兵の数は、増えている。


「三日以内にもう一段増強されます」


 レティシアが淡々と告げる。


「侵攻の兆候は」


「明確な命令は確認できません」


「だが準備はできている」


「ええ」


 静かな圧力。


 それが最も厄介だ。


 *


 王城評議室。


「軍事衝突は避けられるか」


 ユリウスが問う。


「可能性は五分」


 レティシアは正直だった。


「だが、こちらからは仕掛けない」


「弱腰だと受け取られないか」


「受け取られてもいい」


 私は言う。


「全面戦争になれば、王制不要論は爆発します」


 思想と軍事は結びついている。


 戦争は、理想を飲み込む。


 *


 同時に、経済も動く。


「通貨が再び売られています」


 フィオナの声。


「軍事緊張の影響か」


「それだけではありません」


 彼女は一枚の書簡を差し出す。


 セレスタ商会連合からの声明。


 ――王制の不安定さが市場を揺らしている。


「思想と経済を同時に」


 アルヴェルトが低く言う。


「徹底している」


 静かな戦争。


 刃は見えない。


 だが確実に削ってくる。


 *


 王都。


 広場は落ち着いている。


 だが不安は消えない。


「また価格が上がるのか」


「戦争になるのか」


 人々の声は、疲れていた。


 リリアは市場を歩く。


「王は動いている」


 誰かが言う。


「でも終わるのか」


 彼女は立ち止まる。


「終わらない」


 小さく答える。


「だから進化するの」


 制度は、完成しない。


 だから続く。


 *


 セレスタ公国。


「王は全面戦争を避ける」


 ミレイアが報告する。


「当然だ」


 カイエルは頷く。


「戦えば、王制は結束する」


「では?」


「削る」


 短い言葉。


「軍事は影」


「本命は信用だ」


 信用を奪えば、王は孤立する。


 *


 王城。


 私は一人、草案を前にしている。


 第二次再編。


 任期制だけでは足りない。


 王弾劾制度。


 王位選出制。


 王族特権削減。


 だがそれでも足りない。


 王が退いた後、混乱が起きれば意味がない。


 制度は“移行”まで設計されねばならない。


 扉が開く。


「陛下」


 フィオナ。


「市場防衛策、実行可能です」


「準備金を使う?」


「限定的に」


「副作用は」


「将来的な財政圧迫」


 短期安定か、長期負担か。


 均衡は常に交換だ。


「実行しましょう」


 私は決断する。


「今は崩さないことが優先です」


 *


 翌日。


 王国は通貨防衛策を発表する。


 市場は一時的に落ち着く。


 だが評論家は言う。


 ――持続可能か?


 疑問は消えない。


 *


 夜。


 国境で、再び小規模な接触が起きる。


 今回は矢は放たれない。


 だが睨み合いは続く。


 戦争ではない。


 平和でもない。


 その中間。


 静かな戦争。


 *


 王城の塔から、王都を見下ろす。


 灯りは消えていない。


 人々は眠り、明日も働く。


 思想に揺れながら。


 価格に揺れながら。


 不安に揺れながら。


 私は呟く。


「王は永遠ではない」


 だが。


 この揺らぎが続く限り、王は必要かもしれない。


 それが真実なら。


 王は退く前に、証明しなければならない。


 王がいなくても回る制度を。


 軍に頼らず、

 怒りに流されず、

 信用を失わない国家を。


 遠くで雷が鳴る。


 嵐はまだ来ていない。


 だが気配は濃い。


 静かな戦争は、終わらない。


 それは今、始まったばかりだ。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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