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ぼくらのカスみたいな青春に捧げるレクイエム  作者: 藤原ゴンザレス


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8/8

第8話 野球部スペアリブ事件

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あのね。神宮司くん。こ、こ、こ、こ、こ……」


「コケコッコ?」


 そう言われれば肉の焼けたようなにおいがするな。


「そうじゃなくて! ネットミームの……」


 その言葉だけで瞬時にわかってしまった。

 誰も通報してないのだ。

 ただスマホで撮影してるだけなのだ。


「先生、消防に通報してください」


「神宮司、お前は?」


「中に人がいるかだけ確認します」


「絶対に余計なことはするなよ!」


 そう言って先生はスマホを取りだした。


「はーい」


 生返事をして小屋に近づく。

 バンバンッと中からドアを叩く音が聞こえる。


「真田は安全なとこにいて」


「う、うん」


 ぼくは小屋に近づくと声をかける。


「おーい、開けられそうか?」


「た、助けてくれ! 灯油が! マリファナ栽培用の灯油ストーブに火がつい……」


 どかーんっと音がした。

 ドアがぼくに向かって飛んできた。

 残念ながら、ぼくはアクション映画の主人公じゃない。

 ドアはぼくにクリーンヒット。

 げぶっと肺が潰され空気が漏れる。

 そのまま数メートル飛ばされた。


「神宮司くん!」


 真田の悲鳴が聞こえた。

 死んだ。絶対死んだ。

 自分でもそう思ったのにぼくは生きていた。

 ドカドカとなにかが降ってくる。

 それが焼きすぎたスペアリブになった野球部だったなんてそのときは知らなかった。

 甘いにおいがしていた。

 おかしい。

 硫黄のにおいがしない。

 灯油じゃないのか?

 ……ガソリン?

 そう思った瞬間、もう一度爆発した。

 ぼくはドアに引きずられていく。

 ひしゃげたドアに腰のベルトが引っかかってる。


「ほげえええええええええ!」


 ズルッと脱げた。パンツごと。

 いや違う! ズボンごと裂けたのだ。

 フルチンで飛ばされるぼく。

 小屋の前で撮影してた連中も吹っ飛んだのが見えた。

 お父様、お母様。

 先立つ不孝をお許しください。

 目を閉じると思い出すのは某名門大学付属中学校をドロップアウトしたときのことです。

 友だちに「もうXX生じゃないから友だちじゃないよ」って言われたぼくに「自業自得だバカ。この出来損ないが!」と吐き捨てましたね。

 お母様の「あなた私の子じゃないわ」という言葉、一生忘れません。

 寝静まったあなたがたを包丁で刺さなかったぼくを褒めてください。えらいぞぼく!

 あなたがたの期待を一身に受けた弟も斜陽産業著しい暴走族に入会。

 暴走、カツアゲ、喧嘩と日本の伝統産業の担い手として活躍しております。

 最近では、あなたがたが買い与えたバイクで元気に走り回っておるようです。

 小説家になっててめえらネタにして世間の笑いものにするまで死ねねえぞ!

 一生お前らはさらし者じゃ!

 うおおおおおおおおおおッ!

 ぼくは目を開けた。

 フルチンで。


「うわあああああああああん! 神宮司くん!」


 真田が泣いている。

 泣かないで。

 野球部の盛大な爆発コントでお涙頂戴なんて……なんかムカつくから。

 あいつらの命になんか価値はない。

 ぼくは彼らの死だけは笑い話にしたいんだ。

 ……冷静に考えたら……まだ真田と楽しいことぜんぜんしてない!

 エリート中学をドロップアウトしてから楽しいことなんてなにもなかったぞ!

 いや小学校も勉強ばかりだ!

 楽しいことなんて一つもなかった!

 こんなんで死ねるか!

 ぼくは誓ったはずだ。

 青春を楽しむって!

 そう……それがダメなら自分を殺しに来たエルフにすごいことをするハゲデブおじさんになるんだ!

 あれ……真田。

 ぼくだんだん眠くなってきちゃった。

 ルーベンスの絵はよくわからないけど、SNSで見た叡智な絵は素晴らしかった。

 スペアリブとガソリンの香り。

 サイレンの音。

 ぼくはダブルピースしながら白目になるギャルエルフの夢を見るのだった。


「死亡者二十名、負傷者十五名、痛ましい事故が起こったのは死者が相次ぐ埼玉県内の私立高校です」


 うぇーい。

 病室でダブルピース。

 全学年の生徒の九割が望んだシナリオである。

 不思議と心は痛まない。

 一番喜んだのは野球部のサンドバッグにされてた連中だろう。

 ネットではぼくのフルチン搬送が流れまくってる。

 せめての武士の情けか下半身にはバスタオルがかけられてる。

 これが雑巾だったら泣いていただろう。


『かなたくんもっと殺せ!』


『死人製作乙』


『黒歴史ワロタwww』


 ネットでは人でなしどものコメントがあふれてる。

『フルチン搬送』が検索トレンドになったのだけは許さない。

 なぜぼくの話題は某格闘技イベントが好きそうなヤカラばかりがコメントするのだろうか?

 ぼくはなにも悪いことしてないのに。

 病院に親は付き添いしない。

 親からすればぼくは出来損ないの恥ずかしい人間とのことだ。

 その代わり特攻服を着た弟の(タケル)が来てる。

 近くの公立の工業高校に通ってるヤンキーだ。


「兄貴、痛むか?」


「尻の擦り傷と股間の火傷だけね」


 そうなのである。

 幸運なことにドアが致命傷を防いでくれた。

 怪我は地面にこすった尻と爆風で焼けた股間だけだ。


「マジでなんかあったら呼んでくれよ。夜中でも来るからよ」


「ありがとう」


 嗚呼……我が家でまともなのは弟だけである。

 両親は学力以前に人の心がないのだ。

 情けなくて涙が出るね!

 タケルが涙目でぼくを見る。


「俺よ。兄貴が犯人だなんて信じてねえから! 兄貴は……兄貴は悪口ばかり言うけど人を殺す度胸なんてない!」


 そっちかー!

 そっちなのか!

 ぐ、弟にまでその扱いよ!

 するとドアがノックされる。


「え、えへへへへ。神宮司くん、来たよ~♪」


 真田だ。


「あざっす! 暇だったよ!」


「あれ?」


 真田はタケルを見てる。


「弟」


「あ、そうなんだ。え、えへへへ。お兄さんの彼女の真田です」


「え、彼女! 兄貴!?」


「NTR展開だけは許さない。いくら弟でも……盗ろうとしたら次に死体になるのはお前だ」


「……目が本気だぞ」


「本気だ」


 ぼくから幸せを奪おうとする者は許さない。殺してでも排除する。


「はいはい。わかったよ。それに俺、彼女いるんだよ」


「へー、同級生」


「いんや年上。兄貴の学校の子」


「へ~」


「今度一緒に遊びに行こうぜ」


「お、おう。了解」


 いままでぼくたち兄弟には確執があったが……それがなくなったようでうれしい。

 お兄ちゃん泣いちゃう!

 真田はぼくを見る。


「……神宮司くん」


「どうしたの?」


「あ、あのね……その……男の人のおちんちんってあんなに大きいの!?」


「見られてた!」


「あ、兄貴は使いもしないのに大きいからな」


「セクハラすぎる!」


「あ、あのね! がんばるから!」


「なにを!?」


 こうしてセクハラで事件は幕を閉じたのである……。

 なんだこのひどいオチ。

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― 新着の感想 ―
いやマリファナに誰も触れないの草、草だけに。
今のところ三橋首ポロリ事件と今回の野球部が人為的臭いかなぁ…バレー部もワンチャン? 今のところ犯人が誰かとはわからないけど!なんだったら死神さんがファイナルデスティネーションしてる可能性もあるし >…
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