第二十二話
タケルのお友だちがバンを回してくれた。無免許。
土嚢袋を購入。
バンに積み込む。
主な産業が農業の地域なら米袋も入手できたかもしれない。
ついでにバケツとセメントも購入。
「兄貴。それなんに使うんだ」
「証拠隠滅用。やるなら徹底的に。ね? あ、ナビに海か人工湖の情報追加しといて。埋めるのは重機ないと無理だから」
「タケル……はいこれバールのようなもの。いいか頭は殴るなよ。血が飛んでルミノール反応出ちゃうからな」
「兄貴……」
「手袋は布のは使うな。ビニールのにしろ。ちゃんとマスクしろ。髪の毛長いヤツは縛れ」
俺はタケルのお友だちに指示を出す。
タケルが額を押さえてる。
「兄貴……殺す前提で話してないか?」
「必要あればね。準備はしておくべきだろ」
ニッコリ笑う俺を見てタケルの仲間がヒソヒソ話してる。
べつにおかしなこと言ってないと思うけど。
殺す必要があれば殺す。
そうじゃなければ殺さない。
ただそれだけの話だ。
正当化する必要も善悪で悩む必要もない。
人生という道路に転がる小石を許せるか許せないという話だ。
許容範囲内なら共生する。
許せないなら殺せばいい。
なあに、このどさくさだ。
警察のキャパはすでにオーバーしてる。
一人や二人死んだところで大騒ぎするものはいない。
警視庁や全国の警察が人をよこすって要請をしてるが、我が埼玉が誇る県知事はガン無視してる。
いいぞもっとやれ!
「オキシドールはどうする」
「いまの科学捜査じゃ無駄だ。血を流さないようにしろ。唾液にも反応する。土嚢袋被せてさっさと殺せ」
「怖……」
なあに人が一人死ぬだけさ。
車が発進。
「なあに兄貴、どうやって捕まえるんだ?」
「あー、それはわかってる」
某匿名メッセージアプリを出す。
当然スマホは、駅のロッカーに現金を入れ、匿名アプリで指示された場所で紙袋を拾う方式で手に入れた。
ロシア語や中央アジアの言語が話せると、こういうショッピングも可能なのだ。
途中で下車。
少し用事がある。
ヤードがあった。
ヤードの入り口に例のショッピングで手に入れた種をばらまいておく。
近所の駐車場にもばらまく。
運がよければぼくらを助けてくれるだろう。
「兄貴、それなんだ?」
「秘密。あ、そこ、向こうの家の監視カメラの範囲内だから入るなよ」
下調べはしてある。
監視カメラの場所くらいは暗記してあるのだ。
ヤードを見張るために設置されてる監視カメラがあそこにあるのだ。
だから映らないように気を付けて移動。
予定ポイントに到着した。
「ヤードじゃねえか」
「ここのオーナーは強制送還された。いまは誰もいないというていになってる」
「ていってなんだよ!?」
中に入る。
やはり真田は連れてこなくてよかった。
「そことそこに監視カメラ。映るなよ」
「なんで監視カメラを知ってるんだよ!」
「ロシアのサイトでハッキングされてた。三面図作れば場所がわかる。裏に回るぞ」
「おい、なにが起きて……」
中から人が出てきた。
ぼくはそいつの首にロープをかけて背中に背負う。
地蔵背負いだ。
「小便もらす前に下ろせば死なない。顔が白くなったら教えろ」
「白くなった下ろせ!」
下ろすと男は失神してた。
やはりだ。
「野球部の葛西だ」
「ここはなにやってるんだ?」
「ああ、こいつが出てきたとこから中を覗いてみな」
「棚みたいなのがいっぱいあるけど……」
「カジノだ。オンラインのサーバーは別にある」
「はい?」
「火をつけるぞ」
「は?」
葛西にすべての罪を押しつける。
レインコート着てバックヤードに侵入したら現金盗め。
そしたら火をつける。
葛西のアホの財布から万券を抜く。
さらに葛西の持ってた煙草もゲット。
「一緒に燃やせ」
「正気か兄貴?」
「生まれたときから正気なんて持ち合わせてないが?」
「それもそうか」
警報音が鳴る。
電気ファンヒーターに引火するようにしてやった。
俺たちは葛西を拉致して逃げる。
「なんでこいつを拉致ったんだ?」
「そりゃ一人でいるからだ。それと例の児童ポルノの山。おそらくこいつが窓口になってさばいてるんだろよ」
「本当に殺すのか?」
「もう半分死んでる。俺たちが手を下すまでもない」
「最初からこれを計画してたのか?」
「いいや三つくらいはミスると思ってた。いまは一番うまくいったときのシナリオだ」
「もしミスったら」
「葛西を俺たちの手で始末してた」
「バックはヤクザなのかよ!」
「違うよ」
「じゃあどこが……」
「これだけ人が死んでも動かない組織。警察に決まってるじゃないか」
「はあ?」
「だいたいさー、暴走族のお前が知らねえんだからさー。日本の犯罪組織なわけねえじゃん」
「じゃあ兄貴はどこでそんな情報を」
「ダークネットでロリコン向けのフォーラムに入り込んで調べた。こういうとき東アジアや中東の言葉ができると作業がはかどるな」
「なに言ってんだこいつ……」
「まあこれを見ろよ」
女子高生の写真が写っていた。
「なんだこれ?」
「商品。家出女子高生。30万ドル。そんな価値ねえよな。中学生だと桁が一つ増える」
「は?」
「人身売買だっつーの。例の公団の裏に止めろ」
外国人が日本人を追い出したとこだ。
「なにするんだ?」
「外国人を装って警察にチクる」
「冗談だろ」
「本気だ。葛西は殺されるだろうから、そいつを撮影する」
「お前人の心あるのか?」
「あるわけねえだろ。完全版で産み出されてねえんだからよ」
土嚢袋を被せて縛った葛西を中庭に置く。
そしたら中東の言語で匿名アプリでカジノに教えてやる。
さようなら葛西。
犠牲になってくれ。
ぼくの幸せのために。




