第二十話 グループウェア
さーてカメラを確認。
ロシアのサイトで公開されてる。
カメラから侵入されて学内ネットがどうなろうが今さらささいな問題だ。
そもそも重要な個人情報は学校の個人情報から成績からなにもかも管理してるグループウェアに入ってるだろう。
当然、日付順でバックアップがある。
管理者権限は認証システムでアプリの使い捨てパスワード形式と指紋認証が必要だろう。
もしかすると顔認証とか別なのかもしれないけど。
まさか【password】じゃないよね?
絶対違うよね。
……たぶん違うよね。
学校が契約してるグループウェアに接続。
外部からアクセスして理事長のアカウントを入力。
アホだから職員室の紙に書いてあった。
【password】と入力。
まさかー……さすがに二段階認証あるだろ。
……なかった。
なかったのである。
あー……うん、警察に連絡。
「カメラのセキュリティ設定してたら間違えてアクセスしちゃったぽよ。【password】っ入れたら中入れちゃったぽよ。ぽく知らないぽよ」
と送っておく。
……ついでに個人情報ダウンロードしておくか。
学費の支払いとかデータベースを読み込める形式で書き出しっと。
まさかこの程度は警察も把握してるだろう。
既知の情報に違いない。
たぶんね。
一応ファイルも送っておくか。
「ぼくらの個人情報のファイルです。信用できる警察に送ります」と。
心にもないことを書いて疲れた。
あとは誰がどう動くか……だね。
殺人鬼はおそらく一人で動いてるわけじゃない。
警察に協力者、もしくは犯人そのものがいるだろう。たぶんね。
コカインを探してるやつがね。
それが今回の証拠からぼくが気づかない何かを探り当てるだろう。
ぼくに難癖つけて捕まえて警察署で消すのが一番か。
首つりかタオルを飲み込むか。
ふふ……少し楽しくなってきた。
でもこれは危ない橋だ。
ぼくを確実に殺せるが、警察が捜査の対象になる。
逃げられる可能性はほぼない。
ほぼ無いんだけどね~。
たぶん警察内部のやつが捜査の邪魔してるわけだろうから。
だって人があんなに死んでるっていうのに、あまりにも警察が動かないのだ。
単に無能って考えるより、悪意を持って動いてるのだろう。
知事あたりが犯人と「お友だち」なら死ぬかな。
あ、でも知事なら警察じゃなくて外国人のヒットマンをよこすか。
ぼくは運が良かった。
敵は少ない。
「さーて、データベースに仕込んだ罠に気づくかな?」
ぼくはデーターベースに加工してないなんて言ってない。
コカインの情報らしき書類を紛れ込ませた。
変な箱を見つけたが死んだ警官に連絡して物資搬入口に置いたと。
渾身のポップ体を使った一目見てイラッとする文書だ。
生徒を心の底からバカにしてる教師特有のセンスを再現した。
さあ来やがれ!
夜中、焦った様子の警官が家に来た。
母親が泣き叫ぶ。
タケルはキレてバイクで外出。
ぼくだけ警察署にご招待。
間違いですよ♪
ファイルは見てません。
関わりたくありませんと演技も交えて訴えかける。
途中のパトカーで殺されなかったので帰りも無事だろう。
帰りは送ってくれないのでタケルに連絡しとく。
タクシーなんて使いたくない。
何度も同じ事を聞かれるが知らぬ存ぜぬで対応。
間違えた、【password】だとは思わなかった。
そう言い張る。
だって令和のこの時代にパスワードが【password】だと思わないだろ?
何度も同じ事を聞かれ威圧も受ける。
親が泣くとかぼくにはは興味のないことを延々と言われる。
ただ退屈なだけだ。
「笑うな!」
机を叩くがぼくには効かない。
だってなんの容疑もかかってないもの。
そもそも笑ってもない。
相づちという文明の利器を使ってコミュニケーションしてる風を装ってるだけだ。
「本当になにも知らないんだな?」
なにも知らないし、コカインの行方なんて知りたくもない。
そもそもコカインなんてないはずだろ?
警察はコカインが存在すると思ってるのだろうか?
文書である風に誘導しただけだぞ。
「ちょっと待ってください。もしかして……コカインあるの?」
「……何を言ってる?」
「いやだってアレ……配信者の妄言でしょ?」
「……」
あ、黙った。
え、あるの!?
「帰れ」
「あー! 俺がコカインのこと知ってると思ってたのか!」
「帰れ!」
コカインはあるようだ。
夜中に解放された。
配信者がいたのでチー牛ピース。
「なにやってんじゃ兄貴」
タケルに後ろから蹴られた。
あふん!
「いやファンサしとこうかと」
「バカだろお前」
ひどいー。
タケルをからかって遊ぼうかと思ったら、女子二人がやってきた。
真田と白石さんだ。
「こここここ、こんばんは」
「こんばんわーっす」
「警察どうだったの?」
白石さんが心配そうに聞いた。
「うん、コカインあるって。学校に隠してるかも」
するとタケルに顔面をつかまれた。
「どんなやりとりだ!」
「ま、待て、普通に痛い! いや待て、心が折れるからやめろ!」
解放されるとぼくは教えてやる。
「警察がしつこく聞くから『コカイン本当にあるの?』って聞いたら帰れってさ」
「お前本当になにやってんの?」
タケルは心底呆れてるようだ。
「いやさー、学校のグループウェアに管理者で入れちゃったんだよね。パスワードが【password】でさー。警察に知らせてやったらこれよ」
笑いながらみんなで徒歩で帰る。
タケルには白石さんを送らせる。
俺は真田を送ってく。
「なななななな、なに考えてるの?」
「うーん悪いやつが見えるようになる魔法」
ぼくは笑った。
さーて、ここまでで準備はできた。
あとはカラオケ大会に備えるだけだね。
計画通りならようやく受験勉強ができるようになるね。




