第十八話 サイコパス復活のお知らせ
真田が慌てた様子でやって来た。
安城さんは性格が悪い。
俺たちのクラスの女子の多くは性格がよろしくないのだが、その中でも別格なのが安城さん。
真面目なふりして俺とか陰キャグループに遠回なマウントを取るのが三橋さん。
正面切ってバカにしてくるのが安城さんだ。
高位カースト女子って陰キャに容赦ないよね。
真の高位カースト女子である白石さんを見習え!
正確の悪さをランク付けするのは難しい。
だけど、ぼくは安城さんの方が苦手だ。
三橋さんはスルーすれば追撃してくることはない。
いつまでもしつこく絡んでくるのは安城さんだ。
かまってほしいとかでは断じてない。
喧嘩売ってくることでしか人間関係を構築できないタイプの人間だ。
どちらにせよ、ぼくの人生のメインキャラクターじゃない。
デレもしない異性のことを考えるのは時間の無駄だ。
腹も立たない。
顔?
どんな顔してたかな?
どうにも思い出せない。
ボクにとって心の底からどうでもいい人間なのだろう。
「いつからいなくなったの?」
「……三橋さんが亡くなった日の前日だよ」
白石さんが答えてくれた。
「なるほどね……」
高確率でバラバラ死体は安城さんだろう。
どういう状態だったのかはわからないが……。
簡単に個人を識別できる歯と指はなかったのだろう。
歯は治療記録から、指は指紋。
DNA鑑定をしてないのが気になる。
……安城さんの行方不明をまだ警察は知らない?
まさかー……。
「真田……」
「はーい」
ライブ開始。
タケルと白石さんは画面に入らないように避けた。
なぜに?
「同級生が行方不明になってます」
もう言ってしまった。
どうせ警察はぼくたちのライブを監視してるだろう。
『よ! 死神!』
『また死んだか』
『殺人鬼乙』
警察はちゃんと調べてください。
そもそもメモリーカードだって探す気がなかった。
いや……待てよ。
大麻やコカインが本命であってメモリーカードなんてどうでもよかった?
なんとなく流されてしまってる。
犯人がとんでもない権力者?
……権力者?
事故の方の規模の大きさで騙されてる?
ガソリンスタンドでマイケルベイしたアホどもはどうしてコカインのことを知った?
どこ情報だ?
おそらく警察じゃない。
なにが引き金だ?
そもそもの発端は?
野球部の集団万引き……そこからの……三橋だ。
三橋は先生と仲良しだった。
学校の上層部や野球部や地元の警察なんかともお友だちだった。
粘膜的な意味でね。ラブ&ピース。うぇーい!
「三橋だ……」
「なななな、なに?」
「三橋の死と安城さんの行方不明……関係がある」
誰もが思いつく話でしかない。
そうりゃそうやろってレベルの話だ。
『バカの頭脳戦乙』
『バカなのにがんばった!』
『バカなのに偉い!』
こいつら死なねえかな?
なるべく苦しみながら。
『ショッピングセンターのバラバラ死体ってもしかして』
「それはぼくが言わなかった部分。憶測はよくない。ねえ警察さん」
警察に軽く喧嘩売っておく。
これで調べなかったら顔に入れ墨入れたアホどもが警察に乗り込むだろう。
それによって誰が死のうがぼくには関係ない。
ぼくが守りたいのは真田とタケル、そして自分だけだ。
手段?
はは!
もう選ぶ段階じゃない。
タスクは簡単だ。
警察を悪者にして疑惑をばら撒く。
もし遺体が安城なら、「ぼくらは警察に見捨てられた! 警察が動かないから安城が死んだ!」と被害者ヅラする。
違うのなら、「安城のみが心配だ! 警察はなにやってるんだ!」と被害者ヅラする。
「くくくくく……」
俺は悪い顔でニヤリと笑う。
すると白石さんがボソッとつぶやく。
「サイコパス……」
するとタケルが言いやがった。
「ああ、そうだ。兄貴はお受験で壊れて言動がおかしくなったんだわ。親が慌てて精神科に連れていったら反社会性パーソナリティ障害って診断されてさ。良心が全くないんだってさ」
まーたそうやって人の黒歴史を蒸し返す!
「良心くらいあるわ。優先順位をつけてるだけで」
真田とタケルと自分以外はどうなってもいい。
そんな本音むき出しで正直に生きてるだけだ。
「それがまずいんだろ。兄貴は身内じゃなきゃ誰でも見捨てるだろ」
「いや、できる限り助けるぞ。後からなに言われるかわからんからな。自分が危なくなったら見捨てるがな」
「な、極端に合理的だろ? 良心ねえのよ」
「あのなタケル……世の人間に良心がある前提で話をしてるが……良心なんてものが存在してたらチー牛差別もお受験もねえと思うし、今回の事件で人が死にまくってねえと思うのよ。それに暴走族やってるお前が言うな。俺は少なくとも世間に迷惑かけてねえ」
「陰謀論ぶち上げて世論をコントロールしようとしただろ! だから人を操るのはやめろと!」
「操ってなんかいません。被害者ヅラして責任を回避するだけです~」
『喧嘩しないで! お兄ちゃんは面白いこと提案してるだけだから!』
『そうだよ! また誰か死ぬと思うし!』
『そうだそうだ! お兄ちゃんは悪くない!』
「な、みんなそう言ってるだろ」
「日本中のサイコパスどもが共鳴してる……」
ひどくね?
俺そんなに悪いことしてないよ。
警察を追い込んで都合のいい展開に持ち込もうとしただけじゃん。
「とりあえず一発殴らせろ!」
タケルが胸倉をつかんだ。
あ、口で負けそうになったから暴力に切り替えやがったな!
俺は弱いんだぞ!
痛いの嫌いだし。
「まままままま、待って」
真田が言った。
ぼくはニヤニヤする。
「来たよ援軍が」
パトカーの音が聞こえる。
ライブを止めに来たのだ。
「クソ! 殺人鬼が悪魔を復活させやがった!」
さあ、ゲームをしよう。
俺を犯人扱いしたやつが悪い。
文句は視聴者に言え。




