表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サラダな天使の契約者  作者: あしゅ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/77

魔王の顕現(3)

 黒竜の吐息は灼熱の嵐となって森を焼き尽くした。

 枝葉は一瞬で灰に変わり、土は赤く爛れ、空気そのものが灼ける。


「っ……熱……!」

 ニシナが腕で顔を庇いながら後退する。

 だが彼女の髪はすでに石化の波動を帯び、竜の鱗を掴むべく伸び上がっていた。


「まだ効かねぇか……!」

 ネツレイが銀刃を閃かせ、炎の隙間を突き抜けて竜の翼膜を狙う。

 鋭い金属音が夜に響き、火花が散った。だが黒鱗は分厚く、傷は浅い。


「お前ら、間合いを開けすぎんな!」

 ナヅキが長葱剣を担ぎ直し、炎を切り裂くように前へ踏み込んだ。

「俺が囮になる! 全員でぶちかませ!」


「囮だと? 馬鹿を言うな!」

 キサラギが叫び、閃光弾を連続で放つ。

 白く眩い花火の爆裂が竜の眼を覆い、わずかに巨体の動きが鈍る。


「今だ——!」

 ニシナの髪が竜脚に絡みつき、石化の波紋が鱗を走る。

 同時にネツレイがその隙を狙って刃を叩き込むが——


「フンッ!」

 魔王は低く鼻を鳴らし、わずかに脚を振るだけで衝撃波を生んだ。

 ニシナの身体は宙に弾かれ、ネツレイも地に叩きつけられる。


「ぐっ……!」

「っああっ!」


 二人の呻きが重なるのを見て、ナヅキの瞳が燃え上がった。

「やめろっつってんだろうがあああッ!!」


 長葱剣を大きく振りかざし、夜空を裂く光の斬撃が黒竜の胸板を直撃する。

 轟音と共に鱗が弾け飛び、巨体がよろめいた。


「ナヅキ……!」

 ニシナが必死に立ち上がり、涙に濡れた視界の中で彼の背を見つめる。


 黒竜は低く笑う。

「……その程度で我を傷つけたつもりか。

 仲間を庇い、共に立つこと……それが如何に脆く儚いか、知らぬらしい」


 夜の森を震わせる黒竜の咆哮。

 巨体が尾を振るたび、木々はへし折れ、炎の奔流が森を地獄のように染め上げていく。


「くっ……押し切られる……!」

 ネツレイが咳き込みながら歯を食いしばる。


 だが、その背で毒キノコの天使が薄く笑った。

『焦るな、毒は効かせどころだ。森ごと煙らせてやれ』


「言われなくても……!」

 ネツレイがスティレットを突き立てると、黒い胞子が夜風に乗って舞い散った。

 胞子は炎に焼かれず、逆に炎を包み込み煙幕へと変わる。魔王の視界を曇らせ、竜の眼が苛立ちに爛々と輝いた。


「今だ、影を奪え!」

 キサラギが指を鳴らす。


 その合図に応じて、花火の天使が宙に火花を散らした。

 瞬間、無数の光弾が森を昼のように照らす。

 鮮烈な閃光が闇を切り裂き、黒竜の影を淡く薄めた。


「眩しさに呑まれろ!」

 キサラギが光弾を撃ち込み、竜の鱗を爆ぜさせる。


 だが竜は怯むどころか笑みを漏らした。

「花火か……儚く、脆い」


 竜の爪が振り抜かれ、衝撃波が森を切り裂く。

 キサラギは吹き飛ばされる寸前、ニシナが伸ばした髪に絡め取られて助けられた。


「大丈夫ですか、キサラギさん!」

「ニシナ……!」


 メデューサの天使が低く囁いた。

『恐れを見せるな、視線を重ねろ』


 ニシナは頷き、髪を鋭く操った。

 蛇のようにうねる髪が竜の前脚に絡みつき、鱗を石化させる。

 巨体が一瞬硬直し、足元が砕けた。


「よし、止まった!」

 ネツレイが叫ぶ。


 そこへナヅキが飛び込む。

 長葱剣を掲げ、背後にはサラダの天使が葉を散らすように舞い降りた。

『栄養は十分だ、振るえナヅキ!』


「おうよ!」

 ナヅキが剣を振ると、無数の葉と野菜の破片が刃と化し、竜の石化した鱗を一気に砕き割った。

「BBQにしてやるぜぇぇ!!」


 竜が咆哮し、炎と暴風が一気に解き放たれる。

 四人は吹き飛ばされながらも、必死に踏みとどまった。


「はぁ……はぁ……まだか……!」

 キサラギが荒い息を吐く。


「効いてる……でも、押し切るには足りねぇ!」

 ネツレイが血を拭いながら唸る。


 竜は冷たく言い放った。

「くだらぬものに縋るな。仲間、絆……そんな脆弱なものは切り捨てた方がいい。いずれにせよ、この世界は間もなく我がものとなる。無駄な抵抗はやめろ」


 その冷酷な言葉に、ナヅキは剣を握る手に力を込め、にかっと笑った。

「くだらない? バカ言えよ。そんなくだらないもんが——世界を救うことだってあるんだぜ!」


 四人と四体の天使、その力が呼応する。

 光、石化、毒、野菜の緑。

 夜の森に交錯し、黒竜を中心に渦を巻いていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ